空を飛びたい

飛行機やヘリコプターや
ハングライダーや
なんだっていいや
でも

自分で飛びたい

羽を広げて
ぐんぐん上昇していく
そこから一気に急降下
風に乗って滑空する

そんなことができたら

人間じゃない
そうかもしれない
でも飛べる生き物がいる
僕らも飛べるかもしれない

やってみる?

飛び降りるんじゃない
飛び立つ
飛ぶんだよ
どうしたらいいのだろう

無理だよ

だって僕らは鳥じゃない
人間だもの
だから道具を使う
発明してきたんだ

でも

飛びたい
自分で飛びたいんだ
どうしたらいい
どうすればいい

なぜ

なぜ君は飛びたいの
そこが大事だよ
飛ぶ理由
教えてよ

理由なんてない

そうか
君は夢を見ているだけ
いやちがう ただの夢想空想
あったらいいなできたらいいな

バッカじゃないの

もう少し
真面目に考えろよ
それか
夢想空想を現実にしろよ

それならできるよ

絵でもいい
音楽でもいい
映画でもいい
その中なら飛べる

飛べるよ

憧れるだけじゃダメなんだ
発明しなきゃ
自分で作り上げるんだ
空想夢想を

すばらしいよ

それは夢であって夢で無くなるんだ
現実じゃないけど現実になるんだ
ほら見つけたじゃないか
やりたいこと

頑張れよ

 

存在


楽しそうに
家族連れが
向こうから歩いてくる

僕のことなど
気もつかず
僕のことなど

嬉しそうに
笑っている
これから野球観戦のようだ

僕のことなど
知りもせず
僕のことなど

同じような服を着て
同じ場所で買うのだろう
笑いながら買うのだろう

僕のことなど
存在も
不明だ

僕はなぜ服を着ている
誰に見せる服なのか
それなら裸で構わない

だって誰も見ていない
誰も気づいていない
誰も

僕のことなど
存在も
不明だ

 

求めていたもの


僕は山間の道を歩いていた
とても天気が良く
心地よい風が吹いている

どこに向かうでもなく
ただただ歩いていた
気持ちよければいいじゃないか

そう思いながら
極力何も考えないように
心地よさに集中しようとしていた

すると突然、雲が広がりだし
怪しい天気になってきた
相変わらず僕はついてないな

そんなふうに思いながら
舌打ちして
木陰に入った

空から雨が降りはじめ
その様を見ていたら
気がついた

空から雨が降り注ぐ
その様子
なんて美しいんだろう

いくつもの線が
輝き
空から降り注いでいた

知らなかったな
僕は本当にバカだな
そう思って木陰から足を踏み出した

降り注ぐ雨
濡れた葉っぱの匂い
光り輝く雨粒

なんて気持ちいいんだ
これだよ
僕が求めていたのは

僕はずぶ濡れになりながら
楽しくて
楽しくてしょうがなくて

気がついたら
雨になって
川になって
土になって
空になって
自然になっていた

これだよ
僕が求めていたのは
やっと見つけたよ

ありがとう

 

smile


やあ
こんにちは
元気かい
僕は元気だよ
なんとかやってる
そちらはどうだい
変わりないかい
じゃあね
またね

ほっとする
またなんてない
だって
僕は一人だから
一人が怖くて
一人が好きだから
一人でいるのは辛いけど
一人でいるのに慣れてしまうと
一人でいるのは心地よい

やあ
また会ったね
どうだい
今度飲みにでも行こうか
そうか
そうだよね
行くわけないよね
僕なんかと
一緒にいてもおもしろくないもんね
ただの知り合い
仕事上の付き合い

そうなんだ
だから
僕は一人が心地よい
一人でいれる自分になった
食事だって一人でできる
何も怖いことなんてない
いいだろ
楽しいよ
快適だよ
だって自分のことだけ考えていればいいのだから

やあ
なんか元気ないね
どうしたんだい
どうした
なんで泣くの
ほら
ハンカチ
涙を拭きなよ
でも
僕には君の悩みに応えられる度量はない
ごめんね

いったいどうしたっていうんだ
この娘のこと
なんとかしてあげたいと思う
僕は自分以上に人を愛せない
ずっとそ思ってきたじゃないか
それなのに
この娘のために何かしてあげたい
そんな自分がいた
僕らしくない
僕らしくないじゃないか

やあ
落ち着いたかい
食事でも行こうか
いつもは一人で行く
とびきり美味しい店があるんだ
きっと元気が出るに違いない
だから
だから泣かないで
笑ってよ
そう
そうだよ
笑う角には福来る
そういう決まりさ

さあ行こう
美味しい食事でもして
楽しいことはいっぱいあるさ
さあ
行くよ
一緒に

 

情けない週末


晴れた日曜日
どこかに出かけたくなる
どこに行こう
希望でいっぱい
満ち足りた時間

でも考えるだけで
時間は過ぎてしまい
もう夕方
残念、また来週
そんな日曜日

そして
そんな週末の繰り返し
早く週末がやってこないかな
そればかり考えて
日々を過ごす
そしてやってきた週末

希望に胸を膨らませ
そしてしぼみ
焦り
何もしないで終わる週末
情けない週末

一年って早いね
そりゃ早いさ
こんな日々を送っていたら
毎週やってくる
希望に満ちた
情けない週末

その繰り返し
あっという間に一年が経ち
三年が経ち
一生が終わる
そんなこと知ってか知らぬか
ただ焦っている

絶望という名の焦りを
欲望でごまかして
眠ることで正当化して
嘘をつきながら生きている
そんな日常

もうやめろ
やめようよ
stopだ
いいわけないよ
こんなこと
もっと真剣になれよ

真剣になって
何もできないことを知るのが怖いから
続けている
ごまかし続けている
そんな日常
そんな人生

やめようよ

stopだ

 

幸せだなぁ


お風呂に入って考えた
幸せだなぁ
暖かくて
気持ちよくて
ずっとこの瞬間が続けばいいのに

お酒を飲んで考えた
幸せだなぁ
美味しくて
なんだか楽しくて
ずっとずっと飲んでいたいや

布団に入って考えた
幸せだなぁ
眠くて眠くてしょうがない
このまどろみの中
ずっと眠っていたいや

そうしたら
ずっと眠ってた
もう起きることはなかった
ずっとずっと
幸せだなぁ

 

翔んだカップル


素敵な服だね
かわいい
どこで買ったの
無粋なこと聞くね
似合うか似合わないか
それだけよ

彼女は言った

似合う
つまり
自分がわかっているっていうこと
自分を客観的に見ることができているということ
その結果が似合うということよ

彼女は続けた

着ている服も含めて私なの
だから褒められて嬉しいわ
でも勘違いしないでね
服だけを褒めないで
この服を着ている私を褒めてちょうだい

僕は言った

そうだよね
そうなんだよね
あのさ
そんなこと知ってるよ
それを知ってる僕だよ
信じてよ
僕は君を知ってるんだから

素敵な君

そんなこと言えるわけがない
でも言うよ
素敵な服だね
かわいい
もちろん君さ
君の全部が好きさ
だって
素敵なんだもの

だけど言わないよ

言えないよ
そんなこと
言わなくてもわかってよ
言霊だって?
また難しいことをいうな
わかった
わかったよ
言うよ

似合ってるねその服
君らしい
本当かわいい
服じゃないよ
君のこと
本当さ
その服を選んだ君が好き

僕の好きなもの
それは
君のこころ
いいだろ
素敵な二人
そうさ
僕らは
お似合いのカップルさ