キリンの教え


キリン
キリンの首はなぜ長いのだろう
キリンはなぜ黄色いのだろう
淡い黄色
ホットケーキみたい
つぶらな瞳
長いベロ
どうしてそんな姿をしているのだろう

キリン
キリンは僕らを見てどう思っているのだろう
ちっちゃくて二本足で歩く
蹴れば折れそうな体躯
変な洋服を着せられて
いつも何か重いものを持って
ため息つきながら俯いている
どうしてそんなに疲れているのだろうって

キリンは僕らに見られているけど
そう思っているのは僕らだけかもしれない
キリンが僕らを見ている
僕らが見られている
そして観察されている
だってキリンはキリンだから
キリンは自由だ
僕らはどうだろうか

僕らは僕らの意思でおしゃれをして
好みの服を着て
カバンを持って
かっこいい髪型に決めて
お化粧して
楽しくおしゃべりしたり
美味しいもの食べたり
僕らだって自由だ

そんな自由ならいらないね
キリンが
あのつぶらな瞳で言う
決められた自由
そんなの自由じゃないね
自由とはもっと自然なもの
動物園にいる僕らキリンは自由じゃない
でも社会で生きる君らはもっと自由じゃない

自由とは自然でいること
動物園にいる僕らと
社会の檻の中で暮らす君らは
なんら変わらない
自由じゃない
それどころか
自由を装っている君らの方が不自由だ
不自然だ

キリンはそういうと
厩舎の奥へと消えて言った
僕らが自由と思っていることは
自由ではないのだろうか
キリンに聞いて見たかったけど
僕らの自由は本当の自由ではないかもしれないけど
それがわかってればいいじゃないか
これも悪くないさ

そう思った
 

旅立ちの日


朝早く起きて
空を見たら
宇宙が見えた

うっすらとした青空
朝焼けが始まる瞬間
ちぎれた雲の隙間から宇宙が見えた

この空の先には
宇宙があると知っていたけど
本当だったんだ

遠く遠く
どこまでも続く
果てしない空間

アメリカやヨーロッパ
月や太陽
どころじゃない

ましてや
僕の家族が暮らすあの街
なんて近いもんさ

そう思いながら見ていたら
すぐに宇宙は朝焼けで多いつくされ
やがていつもの青空となった

僕らの生きている世界は
自然は
最高に美しい

そこに生きる僕らも
色々と問題は抱えているけれども
美しい

それが自然だから
そしてその自然を超えたところに
宇宙があるから

僕らはまだまだ成長できるのかもしれない
可能性があるのかもしれない
それが僕らが旅に出なければならない理由だから

 

平和


ミサイルが飛んできたらしい
サイレンは鳴らなかったが
スマホがけたたましく鳴っていた
空襲警報
そんなことでもないらしい
窓を開けて
空をしばらく見ていたけど
何もなかったのでテレビをつけたら
みんながミサイルミサイルと言っていた

次の日
テレビをつけたら
不倫だ不倫だと
老人やおばさんたちが吠えていた
あんな真面目そうな人が
あんな優秀な人が
あんな地位のある人が
僕らを裏切ったと騒いでいたけど
僕らは何かを期待していたのだろうか

また次の日
テレビをつけたら
公園に狐が現れた
危険です
寄生虫を持っているかもしれません
行政は何をしているのだろうか
近くに住む人にインタビューして
不安ですというコメントを伝え
笑っていた

ミサイルと不倫と狐
うちのテレビはどうかしてしまったのだろうか
と思い近くの電気屋さんでテレビを見たけど
何十台もあるテレビは同じ内容を放送していた
テレビの中の老人やおばさんたちは
怒ったり笑ったりしてたけど
みなどこか暗い顔をしていて
何かに気づいてるけど
気づかないふりをしているようだった

戦争だ戦争だ
と皆が騒ぐけど
皆どことなく笑っているのは
なぜだろうか
多分
自分だけは大丈夫
そう思っているのだろう
そう思って生きてきたから
そうとしか思えないのだろう

僕らは気づくことから始めなければいけない
このテレビという機械がなんなのか
嘘のつきかたを教える道具なのか
嘘を気づかなくさせるものなのか
受信するということは
発信する者がいるということ
そんな暇つぶしに
付き合うほど僕らは暇ではないはずだ
僕らは気づかなければならない

早くしないと手遅れになっちゃう
自分で考えることを放棄しちゃダメだ
わかってるだろ
どうでもいいことと
どうでもよくないことを
面白おかしく
伝えようとしている人たちがいるってことを
どうでもよくないことが
大事だから嘘ついているんだから

 

大きなお世話


僕の家のとなりには老人ホームがある
だけど老人の姿はない

正確にいいうと
外を歩いている老人の姿がない

みんな家の中にいるのか
一日中ずっと部屋の中にいるのか

ときどき救急車がサイレンを鳴らしてやってくる
最後の外出かな

そんなことを思ったりして
幸せなのかな

余計なことを考えてしまう
ほんと大きなお世話

それでも思ってしまう
幸せなのかな

長い長い人生を生きてきて
最後はここで一人で暮らす

一人ではないのかもしれないけど
多分みな一人だと思っている

でもよく考えたら
僕らも同じかもしれない

外出することがあるだけで
家ではひとり

僕らはひとり
結局はそういうこと

あとはどう暮らすか
どう暇をつぶすか

だからあまり深刻に考えてもしょうがない
ケセラセラ

あるがまま
自然に身を任せていればいいんだ

僕らはひとり
自分のやりたいことをやればいい

人の目なんて気にすることはない
だから大きなお世話

 

ステキだね


素敵って
ステキだよね
ステキな言葉

僕らはステキな僕らでありたいし
僕はステキな君に恋したいし
僕は君にとってステキな僕でありたい

素敵はステキ
幸せの言葉
幸せの合図

だって僕らは
ステキを求めている
自分自身も君にも

そして僕はこう思うんだ
みんながステキになれれば
この世界全体がステキになるって

だから
みんなステキになろうよ
ステキな僕らになろうよ

そんな僕らが暮らすこの世界は
楽しくて面白くて喜びに溢れていて
それはそれは最高だろうな

ステキはね
一つじゃあないんだ
人ぞれぞれに違うのさ

だからみんなは
みんなそれぞれのステキであればいい
そうすればこの世界はステキになる

なれない理由がない
僕らには僕らの君には君の
ステキがあるから
 

house


ピンクの扉
黄色の扉
紫の扉もいいかもね

みんなで塗るんだ
ペンキを持って
汚れてもいい服を着て

そうすれば
僕らだけの空間
幸せの空間が出来上がる

そのまま家も塗りたいね
君の家は何色
僕の家はブルーさ

海のような
空のような
そして僕の心のようなブルー

最高だろ
そんな家に住んで
そんな扉に囲まれて

家の中には君たちがいる
色に囲まれた僕らは
いろんな色に彩って

時には怒ったり
涙することもあるけど
構うもんか

僕らにはこの家
この空間があるんだから
いつでも帰ってきららいい

僕らのbluehouse
それはそれは
ステキな家さ

いつでもおいでよ
いつでもウエルカムさ
きっと君も気にいると思うよ

それが僕らの空間だから
僕らの家だから
僕ら自身だから

 

僕しだい


夏から秋への切り替えは
ほんの一瞬で訪れる
誰かがスイッチを押してるみたい
涼しい風が吹いてきて
なんだか匂いが変わりだす

この国には四季がある
他の国にはないのかな
春夏秋冬あたりまえ
そう思ってきたけれど
そうではない国もあるらしい

ずっと常夏の国
ずっと雪で覆われた国
ずっと曇ってばかりの国
ずっと雨が降らない国
ずっとみんなが泣いてる国

世界中には色々な国があると言うけれど
本当はないんじゃないか
そんなこと思ったりする
世界には僕しかいなくて
誰かが僕を育てるゲームをしているのではないか

だとしたらその誰かは面白いのかな
僕を育てること
何もドラマチックなこともないし
ただの平凡な
ただの男

そんなバカなことも思うけど
世の中うまくできすぎていて
僕が知らないだけかもしれないけど
なんだか本当じゃなく見えてきた
本当じゃなければなんなんだろう

もう直ぐわかるかもしれない
そんな時が来るかもしれない
それまで暇を潰していよう
誰かは面白がってくれるかな
それは僕しだい