吊橋

 

雨の中

橋を渡ったんだ

 

縄で編まれたその橋は

吊橋

 

キレイなとてもキレイな

清流

 

その橋の真中まで行くと

ふっと風が吹いた

 

足元を見ると

大きな隙間

 

キレイなとてもキレイな

ブルーの水

 

僕は吊橋から手を離し

ふっと滑り落ちた

 

不思議なことに

清流には落ちず

 

僕は吊橋をぐるりと一回転し

雨に濡れた吊橋を上から見ていた

 

僕は小刻みに揺れていて

おかしいな

 

そう思ったら

虫の背中に乗っていた

 

その虫のおしりは光っていて

誘導灯のようだった

 

ホタル?

僕はホタルに乗っている

 

そう思ったけれど

そうではなくて

 

僕は蛍になっていた

橋を渡る人を誘導する

 

こっちだよ

気をつけて

 

こっちだよ

こっちにおいで

 

僕は灯台になりたかった

人を誘う灯りになりたかった

 

僕はホタルになって

この橋で待っている

 

君が来るのを待っている

 

大人ってなんだ

 

大人ってなんだ

 

ゴルフがうまくて

お酒が強くて

スナックが好きで

 

話し好きで

面倒見が良くて

まじめで

 

自分が大好きで

ずるくて

生き方を知っていて

 

世間を知っていて

自分を知っていて

相手を知っていて

 

それが大人なら

僕は大人ではない

 

それが大人なら

僕は子供かというとそうではない

 

では僕は

なんだ

 

ひとりが好きで

面倒くさがりで

話すのも億劫で

 

僕は僕が好きなもの

僕が信じるものを

作りたい

 

それに心を動かしてくれる人

力を与えたい

僕の力にしたい

 

そんな大人がいてもいい

みんなと同じでなくていい

 

だから

僕は大人だ

 

僕のなりたい

大人になるんだ

 

人生いろいろ

 

お店に

たくさんの商品

 

同じ服

たくさんの色

 

人は色々

みな好みが違う

 

作り手は

色んな商品を世に出し

 

いろいろな人に

選んでもらう

 

だから世界は

世の中はおもしろい

 

たくさんの人が

たくさんの生き方をしている

 

ゴールはひとつではない

教えてくれる

 

それなのに

学校や会社では

 

同じゴールを求められ

同じやり方が評価される

 

人には好みがあって

みんな違うから

 

同じもの作っても

同じやり方しても

 

違うのに

人の数だけゴールがあるのに

 

だれも気がつかない

決まってるから

 

何が?

何も決まってやいない

 

教えてあげる

人生いろいろ

金色の電車

 

線路が

どこまでも続いてる

 

電車がやってきた

金色に輝いている

 

その電車は

光りに包まれていた

 

スリーナイン?

このまま銀河に飛び立つ

 

電車じゃない

筋斗雲かもしれない

 

僕も乗せてくれませんか

行きたいんです

 

新しい何処か

僕の知らない何処か

 

お願いです

行きたいんです

 

電車が近づいてきた

二両しかない電車

 

それはごく普通の

田舎の電車

 

金色に見えたのは

夕日に包まれていたから

 

電車は行ってしまう

再び金色に輝き出した

 

僕を乗せてくれませんか

連れて行ってほしいんです

 

新しい何処か

僕の知らない何処か

 

金色の電車

乗せてください

 

明日に向かいたいんです

お願いです

感謝の街

 

いつか来た場所

 

思い出した

海も電車も

初めての場所

 

あのときの気持ち

 

思い出した

打ちのめされ

悲しさ

 

あのときの景色

 

やさしくて

荒々しくて

僕を包んでくれた

 

海を見る

 

慰められ

勇気づけられ

力をもらう

 

僕は気づいた

 

いつか来た場所

ここは

感謝の街

 

忘れてはいけない

 

今の自分

あのときの自分

これからの自分

何処かに

 

展望台と書かれた

案内板

 

そちらに向かい

山を登る

 

誰も訪れたことがないような

山道

 

クモの巣が張っている

草が僕らの邪魔をしている

 

そんな先には芝生が広がり

展望台らしき小屋

 

誰も来なくなったであろうその小屋には

火の見櫓みたいなものがあって

 

そこをゆっくる上り

あたりを見る

 

木々の間から

島が見える

 

その島からは狼煙が上がり

人々の生活があった

 

僕は櫓を降りて

人気のない小屋を見て

 

何時かしかの賑やかな日々

子供の声や

恋人たちの息遣いや

温かい人々のぬくもり

そんな情景が浮かんできて

 

いくつもの人生

その通過点であったであろう

 

この小屋

この風景

 

それを受け止めて

僕も向かう

 

何処に向かっているかわからないけど

ここが何処かはわかっている

 

何処に向かうかは

僕次第であることもわかっている

 

それを受け止めて

僕は向かう

 

いくつもの通過点

感じ考える

 

大切なこと

それが人生であること

 

気づきながら

向かう

 

何処かに

 

オリーブの木

 

海にポッカリ

浮かぶ小島

 

その脇を通り抜ける

僕らの船

 

ゆっくり

ゆったり

 

どこに向かう

目的地はあの島

 

あの島には

オリーブがある

 

とっておきの

あの島へ

 

港につくと

そこに人はなく

 

ただただ

オリーブの木があるだけ

 

僕らは実を摘み

ポケットに入れ

 

宝物を慈しむかのように

大切に持ち帰る

 

また来るから

そう約束して島を出る

 

みんなが生きていることを確認して

僕らが生きていることも確認して

 

そうして僕らは

一年を送る

 

また来るから

オリーブの木が僕らを見送っている