地下鉄に乗って


地下鉄に乗って
どこまでいくというのでしょう

窓を開けると
濁った風が巻き込んで
僕らはトンネルの暗闇に
吸収されてしまいそう

地下鉄に乗って
どこまで行けばいいのでしょう

車内には僕一人
他に座る人もいないというのに
椅子の端っこで
ちじこまって座る僕

地下鉄に乗って
どうして僕はいくのでしょう

あの駅は何って名前だったっけ
確か空という字がついてたと思う
駅前 時計屋の二階に喫茶店のある
静かで空気のきれいなあの駅

地下鉄に乗って
どれだけ遠くに来たのでしょう

終点です
車掌が降りるよう急かしている
乗ってくる人なんていないのに
僕はゆっくり歩き出す

改札を抜けると
長い長い 階段がある
エスカレーターもついていない
細長い階段

ようやく明かりが見えてきた
空気の匂いがする
青々としてヒンヤリとした
涼しげな空気が流れてくる

外に出ると
そこに太陽はなく
ただただ青い空が広がっていた
足元には水が流れ
いくつもの川が流れ
僕はいつしかその川に飲み込まれ
漂い 水の中から
ただただ青く広がった空を見つめた
青く広がった空は
やがて川と一つになり
なぜだか光り輝き出し
僕自身とも一つになる

すると僕はとてつもない幸福感に包まれ
暖かな温もりに包まれて
笑い声や 楽しい会話に包まれて
眩しくて 柔らかい明かりに包まれて
はじめて優しさというものを知り

僕は生まれた