自転車に乗って


自転車に乗って
どこまで行けばいいのだろう
どこまで行こうとしてるのだろう

土手沿いを
目的もなく走る僕ら
このまま走り続ければ海に出る
そんな遠くまで行けるわけがない
そろそろ引き返そうよ
そう言って夕日が沈む頃には
必ず家に帰っていた

でもいつか
みんなで海を見てみたい
誰しもがそう思っていた

あの日
仲間が一人がいなくなった
両親や学校の先生が探し回っていた
どこか行きそうなところ知らないか?
そう聞かれて
みなが思った

僕らは誰にも言わないで
自転車に乗って
土手を走り続けた
夕焼けで 空や 辺り一面が
真っ赤になったと思ったら
すぐに暗闇がやってきた

暗闇の中 僕らは走り続けた
自転車のライトが揺れながら
僕らの行き先を案内している
潮風のにおいがしてきた
海が近くなってきたんだ
ふいに目の前のライトを何か遮った

友人がうずくまっていた
隣にはチェーンがはずれた自転車があった
友人は僕らを見て変な顔をしていた
誰かがはずれていた自転車のチェーンを直し
誰からともなくこう言った
帰ろう
みんな何も言わず
自転車に乗って帰った
月の光が僕らの帰り道を照らしていた

家に着く頃には 朝焼けがじんわりと
闇夜に染み込んでいった
夕焼けとは色が違うことを初めて知った
僕らは自転車のペダルを踏み込み
それぞれの家に帰って行った

あれから何年足ったのだろう
海に行きたいときにはすぐ行ける
朝焼けだって仕事帰りや飲んだ帰りに
何回も見た
そして何も感じなくなっていた

久しぶりに物置から自転車を出し
軋むような音を立てながらペダルを漕いだ
風が気持ちいい
自分の力で前に進む
こういう感覚はしばらく忘れていた

自転車に乗って
僕らはどこに行くのだろう
自転車に乗って
僕らはどこまでいけばいいのだろう
自転車に乗って
僕らはどこまでだって行けるんだ

そう思った