生きるチカラ


君の足音が聞こえてきた
僕は聞き耳を立てて
寝たふりをする

君は寝たふりをしている僕を知りながら
知らないように振舞って
僕にキスをする

いつの頃からだろうか
家に誰か来るのがわかるようになったのは
気配が僕の鼓膜を揺るがす

父が車で帰ってくる
マンホールを車が通る音
ほっとした瞬間

玄関にものが置かれた音
母が買い物袋を置いた音
パッと僕のこころが明るくなる

家のドアが開くとき
希望や安心や心地よさが
僕のこころを開く

その瞬間
僕は幸せに包まれて
希望に包まれる

だから
ぼくも気づかないふりをして
君にキスをする

それが
僕らの
僕らだけの
希望であり
安心であり
生きる
生きるチカラ