霧の中


道を歩いていると
あたり一面が霧に覆われ
自分がどこに向かって歩いているのか
だけでなく
自分がどこにいるのか
ここはどこなのかさえ
わからなくなった
というか
わからないことがわかった

手を前に差し出すと
霧の中に消えてしまい
このまま
僕自身も消えてしまうのではないか
と思って
怖くなったけど
消えてしまってもいいかなと思ったら
もう消えてしまっていることに気づいた

僕は
霧の中
どこに向かっているのだろう
どこに向かっていたのだろう
何をしようとしてるのだろう

そう思ったら
急に霧が晴れてきて
あたり一面が輝きだして
雲の合間から陽が差し込んできて
それはそれは
美しい景色が広がって
僕はなんだか嬉しくなって
明けない夜はないのと同じで
いつか霧だって晴れるんだ

そう思って
歩き出したら
いるはずの僕は
すでにいなくて
もう
どこにもいなくて
きれいな自然だけが
残っていた