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湖の中で


僕はね
僕であって僕ではなくて
一体誰なんだと思ったら
実は誰でもなくて
誰でもない僕はだれでもないから
どうしようかと思ったら
どうしようもなくて
だからとても綺麗な
とても美しい湖に潜ってみた

湖の中は
それはそれは
美しくて
素敵で
素晴らしくて
こんな僕でも
惨めな僕でも
受け入れてくれて
僕は身を委ねて
揺らめいていた

湖の中から
見上げる湖面は
それはそれは
最高に美しくて
光り輝き
きらめいて
その先には
何があるのだろうかと
素晴らしい何かが
あるとしか
おもえない
光景だった

だけど
その先からやってきた僕は
どうしようもなくて
何もなし得なくて
だからここにやってきたというのに
その先の
美しさに撃ち抜かれ
僕は
バカだな
そんなことを
思って
そう思って
身を委ねていたら
誰かが僕の肩をたたいた

振り向くと
当然だけど
誰もいなくて
僕がそう思っただけなのか
なんだろう
そう思っていたら
急に湖の栓が抜かれて
僕は
吸い込まれてしまった

吸い込まれた僕は
それまでと同じように
身を任せていたのだけれど
途中でちょっと
考え直して
少し争って
飲み込まれる中でもがいてみた
そうしたら
すぐ横に穴があって
その穴に入ったら
緑の空間があった

なんだろう
そう思ったら
その緑は
芝生で
よく見ると
花々が咲ききだれていて
そうか
ここは天国なんだ
そう思ったら
また肩を叩かれ
振り向くと

僕はいなくなっていた
そうか
そこで僕は初めて気がついた
いなくなったんじゃない
僕は
最初から
いなかったんだ
そんなことに気がついたら
急に悲しくなって
泣いてみたけど
もう涙は出なかった