青の場所


雪が降り続く中
あの場所へ向かった
行く必要なんてないのに
なぜか向かっていた
ひとり

あの場所は
海の近くにあった
夏は緑があふれ
木立を抜けると
圧倒的な海がいた

僕と彼女は
毎日そこで会った
何するわけでもなく
何かしたいわけでもなく
そこにいた

そこで
緑や青や海を
黙って見ていた
それだけ
ひとつになった僕ら

僕と彼女
そして
緑や青や海と
一緒になった
そんな場所と時間

あれから何年たったのだろう
ここに来るのはあれ以来
ひとりで来たのは初めてだ
おかしいな
ふと思う

だって
僕はずっとひとりで生きてきたのだから
いつでもここに
来ることができたのに
こなかった

これなかった
僕は
傷つくのが怖かった
だけど
いま僕はここに来た

あの場所は雪に覆われていた
白とネズミ色と海があった
だけど
ここは確かに
あの場所だった

あの時
この場所と時間は
僕らのものだった
僕と彼女
そして自然たち

僕はひとり
自然も色を変えてしまった
でも
それぞれが成長している
なくなったものもある

なぜだか
おかしくなって
僕は笑いが止まらなくなった
雪に倒れこんだ
仰向けに

そこには
木の枝にとまる
大きな鳥
あの時と同じ枝
とまっていた

僕を見て
まっすぐ見て
射抜くような目で
こういった
待ってたよ

僕は
その鳥と一つになり
自然と一緒になった
緑や青や白やネズミ色や海と
そして彼女と