銭湯


銭湯に行くと
広いロビーと
番台の女性

いらっしゃいませ
元気な声で迎えてくれる
優しい笑顔

脱衣所に入ると
男たち
無表情な男たち

浴槽は深く
湯は熱く
あっという間に冷えた体が温まる

幸せだ
そんなことを思い
顔を拭う

まわりには
無表情な
男たち

みな
同じように
幸せなのだろうか

隣の男に
聞いてみた
そんなことできるわけもなく

熱くなったからだを持て余し
すぐに湯から出て
脱衣所に向かう

服を着て
ロビーに出ると
目をつぶって椅子に座るひとたち

番台の女性
おつかれさま
優しく声をかけてくる

いつから
僕は
幸せを考えるようになったのだろう

知っている
僕が
幸せでなくなってからだ

幸せを求めて
ずっと
さまよい続けている

銭湯の外に出ると
冷たい北風が吹いており
寒いな

そう思ったけど
体はポカポカ
暖かく

そうか
これが幸せか
そう思ったら

おかしくて
バカみたいで
大きな声で笑ってみた