異国


霧の街を抜けると
海が見える丘に出た
そこには家がたち
広く遠くまで見渡せる
そんな家に
何代もの家族が
暮らしてきた

海を見渡すと
遠く霞んだ先に
島が見える
そこは異国だった
自分の国であって
自分の国ではなく
家族たちは毎日見ているのに

その島には
墓があった
何代も続いている
自分たちの家族の祖先
自分たちをつなぐもの
しかしそこに立ち入ることはできず
遠く崖に立つ家から眺めるだけだった

ある日
船に乗ってその島に向かうことにした
いくつかの切り花と
線香とマッチ
海を渡りその島に向かった
島に着くと
そこは異国ではなく自分たちの街と同じ景色

その島から
自分の家が見えた
ここに
おじいさんやおばあさんの
墓がある
生きていた
住んでいた

墓につき
花を手向け
線香に火をつけると
銃声が響き
墓が赤く染まっていた
何代も続く家族は
その墓の前で終わっていた

つなぎ
繋がり
ここまで生きてきた家族は
家の見える
その島
異国のその島で
息絶えた

やあ
久しぶり
おじいちゃんに
おばあちゃん
僕たちは家族
ここは異国だけど
異国じゃない

一緒に暮らそう
こらからは
ずっと一緒だ
自分たちの家が見える
自分たちの島と同じ
この島で
ずっと一緒だ