僕らの街


踏切があった
一時停止して
左右を確かめてから渡ったけど
その線路はもう朽ち果てていて
電車など走っていなかった

しばらく行くと
駅があった
簡素な建物
かつて人が行き交ったのだろうか
そんな気配はどこにもなかった

線路に沿って進んでみた
あっという間に途切れて
工事現場にぶつかった
何を作っているのか何を直しているのか
そこにも人の気配はなかった

一体全体どうしてしまったのだろうか
ゴーストタウン
蒸発
そんなことはない
今でも人は暮らしている

変わったのはまわりだけ
そこに住む人たちは何も変わっていない
田畑を食い荒らしては去って行くバッタと一緒
この街のことなんて考えていない
ここで暮らす人のことなんて考えていない

これは何もとある田舎町のことだけではない
都会だっていつかこうなる
みんな自分のことしか考えていないから
ここが自分の街だと思っている人なんていないから
いつか自分だけ得して抜け出そうと思っている

こんな世の中
おかしいねって言ったところで何も始まらない
おかしいことがおかしいとわかる人はもういない
わかっていても知らないふり
そうじゃなければ生きていけない

こんな世の中
いつかSFの世界が現実になる
みんな勝ち組だと思っているかもしれない
だけどいつか地球を食い荒らしに来る奴らがいる
それは僕らもしてきたこと

僕らはバッタなんかじゃない
この街を愛し
ここで暮らす人たちを愛し
愛し合う僕らがいる
そんな僕らでありたいじゃないか

まだ間に合う
僕らが僕らでいられるために
つまらない諍いなんて早くやめて
充実させよう
この街に住む僕らだから