一本の木


道に佇む一本の木
誰も気にとめることのない
誰も知らない一本の木

この木は果実を実らせるでもなく
花を咲かせるのでもなく
紅黄に色づき人を喜ばせるわけでもない

ただただそこに佇むだけ
凛と静かに存在するだけ
何も言わずただいるだけ

寂しくはないのだろうか
一体いつからここにいるのだろうか
一体いつまでここにいるのだろうか

でもよく考えてごらん
僕らと何が違うのかって
何も違わない

僕らは話はするけど
歩いて移動するけど
ただ存在しているだけ

この世界に佇む一人の人間
誰も気にとめることのない
誰も知らない一人の人間

でもだからって嘆く必要はない
これが自然というものだから
これが生きるということだから

僕らとあの木は一緒の存在
それに気づくだけでも世界が変わる
明日あの木に触ってみよう

何かが見えるかもしれない
何かが聞こえるかもしれない
それが僕らの生きてる証だから