あの目


曇天の日
分厚い雲の隙間から何かが見えた
確かに見えた

空ではない
陽でもない
もちろん星でもない

誰かが見ていた
こちらを見ていた
僕らを見ていた

何を見ているのだろう
興味深そうに
じっとこっちを見ている

懐かしそうに
慈しむように
例えようのない優しい目だった

どこかで見たことがあるな
そう思ったけど
そんなことはすぐに忘れてしまって

あの目の正体を知りたくなって
見てみたくて
いてもたってもいられなくなって

僕は外に駆け出した
雲の隙間を探したけれど
あの目はもうどこにもいなくなっていて

残念な気持ちでいっぱいになって
家に帰って鏡を見たら
あの目がいた

僕は何を探していたのだろう
あの慈しむような目
僕は誰なのだろう

そう思っていたら笑っちゃった
だから僕を探していたんだ
それに気づいたから