日常


その線路は朽ち果てていた

かつて電車が行き来したはずの線路
学生や会社員がいつもの場所へ向かい
家に帰るいつもの列車
家を離れ新たな旅立ちの日に乗った列車
幾多の思いを乗せ
乗る人が何を思うか思わないか
感じさせることもなく日常であり続けた列車

いつ朽ち果ててしまったのだろう

あの日常はどこへ行ってしまったのか
代替のバスが走っているという
それで代わりがきくものだったのだろうか
あの運転手や駅員さんは何をしているのだろう
聞けばあの嵐が線路を流してしまったらしい
それから修復もできず
草が生え放題の朽ち果てた線路

日常がなくなることも日常だった

みな忘れてしまっていた
忘れ去られてしまっていた
ここに列車が走り
乗り降りしていたあの日常
迎えに行く人迎えられる人
すべてが
日常だった

今日遠くの国からミサイルが飛んできたらしい
あの街は跡形もなくなってしまった
みんな死んでしまった
それでも
みんなは日常がなくなることも日常だと
思うのだろうか
気がつかないでいるのだろうか

今を生きている
それが日常
必死に
頑張って
みんな幸せに生きている
それが日常だから
決して忘れてはいけない