おおきな木


河川敷
おおきな木が
芝生の上でくつろぐ人を
グランドで野球をする子供たちを
自転車の練習をする親子を
おもいおもいの時間を過ごす人々を
何も言わずじっと見てた

台風の日
おおきな木は
川に飲み込まれていた
頭の上の葉が少し見えるだけ
濁流に抵抗している
おおきな木が
そこにはあった

次の日
台風一過の青空の日
おおきな木は
どうなってしまったのだろうか
気になって見に行くと
そこには
いつもと変わらないおおきな木があった

木の根元に
漂流物だろうか
ゴミが巻きついている
それ以外は
いつものおおきな木
じっと何も言わず
僕を見ていた

誰もが台風を忘れ
いつもの日常に戻ると
おおきな木は
何事もなかったかのように
いつもの
おおきな木となって
そこにい続けた

濁流にほぼ全身が飲み込まれた時
おおきな木は
何を考えていたのだろう
ヘッチャラだったのだろうか
怖くなかったのだろうか
もうダメだと思わなかったのだろうか
どうしてなんともなかったのだろうか

聞いて見たかったけど
答えてくれるわけもない
だけど存在している
今日もいつものように
それが彼の答えだ
僕ならどうだっただろうか
あきらめちゃったかもしれない

そんなこと思ったけど
おおきな木を見ていたら
そんなこと思ったことが恥ずかしくなって
お前も頑張れよ
できるから
そんなこと言われているようで
了解って小さな声で言ってみた