カブトムシ

 

カブトムシ

カッコよくて

強そうで

実際強くて

 

硬い甲羅に覆われていて

黒くて

固くて

空まで飛べて

 

森の中が似合っていて

夏も似合っていて

イカも似合っていて

弱い僕には似合わなくて

 

サナギ

いや幼虫

僕はそのくらいの

か弱い存在で

 

僕はサナギにもなれないし

成虫して

カブトムシになることだってできないし

僕はただの僕でしかなくて

 

僕にできること

イカを食べることくらいしかなくて

カッコよくもなくて

人に希望を与えることもできなくて

 

カブトムシ

かっこいいな

そう思った僕は

カブトムシからどう見えているのだろう

 

腕を広げて

飛ぶふりをしてみたけど飛べるはずもなくて

僕を見ているカブトムシの眼には

そんな僕が写っていた

 

よおカブトムシ

君には僕がどう見えているんだい

そう聞いたカブトムシの眼には

もう何も写っていなかった