果物

 

スーパーに行ったら

イロトリドリの果物が並んでいて

その一つを手にとったら

甘酸っぱい匂い

僕は果物になっていた

 

みんな僕を見ては品定め

鼻に近づけて匂いをかぐ

可愛い子に買ってもらえるといいな

そんなこと思っていたら

かごに入れたのはおばあさん

 

おばあさんは買い物袋に僕を入れ

重そうだけど

一生懸命家に持ち帰る

僕はその家のテーブルに置かれて

甘酸っぱい匂いをほのかに撒き散らす

 

次の日

おばあさんは僕を包丁で切りわけると

タッパに入れて家を出た

着いたところは学校の校庭

運動会

 

お昼の時間になり

僕を見て笑う可愛い子

口に頬張り楽しそう

おばあさんも嬉しそう

その瞬間

 

僕は僕に戻って思い出す

あの甘酸っぱい匂い

そうかそうだったのか

僕は果物を一つ手にとって

家に帰ることにした

 

それが僕の人生だった