雪山


雪山を歩いていると
世界の全てが白くなったようで
僕の吐く息も白くて
自分がどこにいるのか
自分がどこに向かっているのか
わからなくなったというか
わからないことがわかった

ここは雲の中ではないのか
手探りで前に進む
からだが軽くなったような気がする
雲の上を歩いているんだ
あの人はどこにいるのだろう
いつもここから僕らを見ているはずだ
あたりを見まわすが
あたり一面は白いだけで
何も見当たらない

とにかく歩こう
前に進もう
少し汗もかいてきた
雪に埋まった靴
足を上げるのが重い
その様子を見て
ここは雲の上ではないと
わかった

目の前に赤い上着をが見える
手袋をした手が差し出される
グズグズしてると置いてっちゃうよ
そんな声が聞こえてきた
そうか
彼女と旅行に来て
雪深い山の中腹にあるロッジ
そこに向かっていたことを思い出す

ふいに僕の視線は上昇し
空を突き抜け
宇宙にあった
真っ黒い空間に
青く とても青く光る星
分厚い雲の隙間に
茶色の陸地
白い部分も見えている
そこを僕と彼女は歩いている

どこに行くのかな
なんで歩いているのかな
何してるのかな
そんな風に思った僕は
もうその星にはいなかった
僕はどこにいるのか
僕はここにいいる
それが現実で本当のこと
僕はいる