コーヒー


一杯のコーヒーを
ぐっと飲み干したら
僕はコーヒー豆になっていた

ここはブラジルだろうか
どこだっていい
暖かな場所だ

僕は広大な土地の
一本の木から生まれた
たくさんのコーヒー豆だった

汗をかいた男たちがやってきて
僕らを木からむしり取って行く
一本の木との別れ

何を言うでもなく
涙を流すわけでもなく
ただの別れ

いつの間にか
僕らはコーヒー豆になって
袋に入れられ

スーパーに陳列されて
ミルで砕かれ
粉々になって

熱いお湯を注がれ
身体中のエキスを抽出され
カップに注ぎ込まれ

知らない人間の口から
飲み込まれ
胃袋に入るのかと思ったら

飲み込んだ人間自身になっって
うまいな
そう思っている僕がいた