クラゲ


君はクラゲを見たことがあるかい?
そう海にいるクラゲさ
夏が終わると出てくるあの気持ち悪いやつ

昨日水族館に行ったのさ
古びた水族館
水槽が並んでいるだけのような水族館

その水槽にクラゲがいた
透明で透き通っていて
キノコみたいな頭に長い長い足みたいのもある

僕はクラゲが泳いでいる姿を初めてみた
頭をふくらましたりしぼませたり
上へ下へと泳いでいた

クラゲって
ただ浮かんでいるだけ
ただ海に身を任せているだけ そう思っていた

クラゲは一生懸命泳いでいた
そしてその姿は
例えようがないほど美しかった

僕は知らなかった
クラゲのたくましさを
クラゲの美しさを

僕は釘付けになった
僕には知らないことがたくさんある
クラゲを見てそう思った

僕は僕がダメなやつだと思っているけど
僕は知っているけど
僕は本当のことを知らないだけかもしれない

ジタバタしてもがいている僕
ちょっと褒められて喜んでいる僕
けっきょく騙されて泣いている僕

そんな僕だけど
そんな僕はほんの一部であって
僕は本当の僕を知らないのかもしれない

僕の美しさを
僕のたくましさを
あのクラゲのような

そう思ったけど
そんなこと知らなくていいや
それが僕だから

そんなこと思ったら
なんか清々しい気持ちになって
水族館から外に出た