りんご

 

久しぶりにクルマに乗って

どこまでも行きたくなったので

どこまでも行ってみた

 

そしたらある街について

こう聞かれた

りんご屋さんはどこですか

 

おかしなこと聞くな

そう思ったけど僕は知らなかったから

知らないと応えた

 

おばさんだった

そう言うと悲しそうな顔をして

どこかに行ってしまった

 

そのまま少し走り続けると

街のハズレに一軒のりんご屋さんがあった

僕はあのおばさんに教えてあげたくて

 

急いでいるわけでもなかったから

あの街に引き返して

おばさんを探した

 

あのおばさんは寂しそうに

公園のベンチに座っていた

隣にはりんごが一個置いてある

 

ああそうか見つけたのかりんご屋さんを

良かったな

そう思っておばさんに町外れのりんご屋さんの事を言ったら

 

お食べ

そういって僕にりんごをくれた

ベンチに置いてあったりんごをくれた

 

僕は助手席にりんごを置いて

また車を走らせた

町外れにさっきのりんご屋さんが見えてきた

 

違った

僕がりんご屋さんと思ったそのリンゴは

真っ赤な心臓だった

 

いくつも店先にぶら下げてある心臓は

ハートの形をしていて

ドクドクドクと動いていた

 

僕はビックリして

助手席のりんごを見たら

そのりんごは僕の心臓だったから

 

ドクドクドク

僕は慌ててその心臓を胸にしまい込み

一目散にクルマを走らせた

 

あのおばさんが手を降っているのが見える

なんて言ってるのかわからない

笑いながら僕を呼んでいる