日常

 

山を登る

何も考えず

ただただ

足元を見ながら

茶色い土を踏みしめながら

ただただ歩きつづける

 

山と言っても本格的な山じゃない

登山道がある標高数百メートルほどの山

それでも息は上がり

汗まみれになり

喉は渇き

その場に座り込みたくなる

 

山頂には何があるのか

知らない

たぶんいい景色なんだろうな

なんのために登るのか

知らない

ただただ登るだけ

 

何かに似ている

気がついた

僕の日常

ただただ過ぎるだけの時間

辛く苦しい時間

その先に何があるのかわからない

 

山頂が見えてきた

視界がひらけた

遠くの街が見下ろせる

僕らが住む街

空を見上げると

いつもと同じ空がある

 

山頂もいつもの街も同じ

僕の日常に山頂はない

もしかしたら何回も

行ったり来たりしているのかもしれない

行ったり来たり

僕の日常

 

山頂もいつもの街も同じ

僕らは行ったり来たり

それが僕らの日常

そう思ったら

なんか清々しい気持ちが湧いてきて

辛いだけじゃないんだな

 

そんなこと思って

山を降りることにした

今度は足元だけじゃなく

周りの景色も見てみる

行き交う人も見てみる

それが僕の日常だった