プール

 

寒い寒い冬の日

寒くて凍えてしまいそう

 

あまりにも寒いものだから

僕は屋内プールに出かけることにした

 

温水で

まるでジャングルにいるかのよう

 

夏の日のように

水に浮かんで空を見ていた

 

そこに空はなく

寒々とした天井があるだけ

 

ここはどこだろう

そんなこと思っていたら

 

何かにぶつかった

大きな浮輪だった

 

僕を助けに来てくれたのだろうか

そんなことはなくて

 

はしゃぐ子供が乗っている

僕になんてお構いなし

 

誰か僕に浮き輪を投げてくれませんか

なくしてしまったんです

 

泳ぐことも忘れてしまったんです

ただただ浮いてるだけなんです

 

僕はどこに行こうとしているのか

ここはどこなのか

 

バシャン

浮輪が僕に向かって飛んできた

 

ちがう

ビート板だ

 

さあ泳ごう

泳ぎ方から思い出さないとね

 

知らないその人は僕の手にビート板を握らせて

バタ足をするよう促している

 

誰なんだろう

でもどうでもいいか

 

僕は体を起こし

大きく足をばたつかせてみる

 

前に進む

驚いた

 

自分の力で前に進むことが

こんない楽しいと思わなかった

 

驚いて

そのことを伝えようと

 

振り向いたら

そこには誰もいなかった

 

僕の手には

ピンクのビート板があるだけだった