強さ

カブトムシ
大きな角があって
かたい甲羅に囲まれていて
黒くて
強そうで
実際強くて
かっこいい
だから
みんな大好きだけど
カブトムシ
なぜそんな
おっきな角を持ってるの
誰に勝とうとしているの
誰より強くなりたいと思ってるの
カブトムシ
もっと大事なことがあるんじゃないか
なあ
カブトムシ

豆腐


豆腐がたくさん浮かんでる
湯気の出ているお湯の中で
グツグツいいながら
ぷかぷか浮かんでは
ゆらゆらしている
そんな豆腐をとろうとして
豆腐は二つに割れてしまう
二つに割れた豆腐は
もぐったりもぐらなかったり
そのうち小さくなって
お湯に溶け込んでしまった
あわてて僕は
お湯に飛び込み
豆腐を探す
でも見つからない
もう見つからないんだ
僕の豆腐
何処へ行ってしまったのだろう

 

ボール

サッカーがうまい少年がいた
その少年は
毎日毎日ボールをけり続けた
ボールは薄汚れて
水たまりや
泥の上を
行ったり来たり
僕はボールになりたかったから
そのボールとなって少年と一緒だった
ボールは友達
少年はそんなことを言ったから
僕の友達は少年だった
そんな二人の
物語だった

ひげ

トウモロコシにはひげがある
たくさんの
たくさんの
白いひげ
トウモロコシの身には
なにがあるのだろう
僕らの体の中には
何があるのだろう
トウモロコシと
僕ら
何が違うのだろう
僕にもたくさんのひげがある
白いのや黒いのや
でも
トウモロコシのひげとは違う
僕らはトウモロコシではない
いったい僕らは何者なんだ