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雨の正体


シャワーを浴びると
身体だけでなく
心までキレイになった気がする

気がするだけで
そんなことはなくて
僕の心は澱んだままだった

林の中を歩いていたら
雨が降ってきて
シャワーと同じように

雨は僕を洗い流してくれたが
不思議なことに
僕の心の澱みも洗い流してくれた

雨に洗い流された僕には
今まで見ていた景色が
まるで別物のように見えていて

すべてが輝き
光に包まれて
幸福感に満ちていた

幸せだな
そん言葉が不意に口から出て
なぜだか涙も出てきて

空を見上げたら
涙がこぼれ落ちないから
目に涙が溜まってよく見えなくて

輝きだけが
僕に降り注いでいるのがわかって
それが雨だと気がついた

僕は知らなかった
これが雨の正体なんだ
雨は水であって水ではなくて

僕らの泉であって
身体と心を作り出す
存在だったんだ

それを知ったら
何だか楽しくなって
僕は涙を拭って

前に向き直し
笑いながら
走り出した

 

異国


霧の街を抜けると
海が見える丘に出た
そこには家がたち
広く遠くまで見渡せる
そんな家に
何代もの家族が
暮らしてきた

海を見渡すと
遠く霞んだ先に
島が見える
そこは異国だった
自分の国であって
自分の国ではなく
家族たちは毎日見ているのに

その島には
墓があった
何代も続いている
自分たちの家族の祖先
自分たちをつなぐもの
しかしそこに立ち入ることはできず
遠く崖に立つ家から眺めるだけだった

ある日
船に乗ってその島に向かうことにした
いくつかの切り花と
線香とマッチ
海を渡りその島に向かった
島に着くと
そこは異国ではなく自分たちの街と同じ景色

その島から
自分の家が見えた
ここに
おじいさんやおばあさんの
墓がある
生きていた
住んでいた

墓につき
花を手向け
線香に火をつけると
銃声が響き
墓が赤く染まっていた
何代も続く家族は
その墓の前で終わっていた

つなぎ
繋がり
ここまで生きてきた家族は
家の見える
その島
異国のその島で
息絶えた

やあ
久しぶり
おじいちゃんに
おばあちゃん
僕たちは家族
ここは異国だけど
異国じゃない

一緒に暮らそう
こらからは
ずっと一緒だ
自分たちの家が見える
自分たちの島と同じ
この島で
ずっと一緒だ
 

バカ


テレビを見ていたら
立派なスーツを着た
偉そうな人たちが
何やら言い合いをしていた

相手の揚げ足をとって
ああ言えばこう言ったり
こう言えばああ言ったり
この人たち何してるんだろう

どうでもいいことを
延々と喋りあい
何がしたいのか
よくわからなかったけど

何か大事なことが決められているらしい
そんなことを知ったのは
大事なことが起きてからで
その時はもう手遅れだった

そうしたらあの偉い人たちは
誰が悪かったのか
ああ言ったからこう言ったから
またどうでもいいことを喋り出したから

この人たちは馬鹿なんだろう
そう思うことにしたんだけど
実は人を馬鹿にしていたのは
あの偉い人たちで

あの偉い人たちは
自分以外の人たちを馬鹿にするために
自分が偉くなるために
ああ言えばこう言っていて

勝手にやってればと思ったけど
どこかで見たような気がして
一生懸命思い出して見たら
僕の会社で見た光景と一緒だった

僕の会社は潰れちゃったから
この偉い人たちも大丈夫なのかな
そう思ったけど
やっぱり一緒だった

潰れちゃった

 

シャンパンと空


今日は何が食べたい?
お肉それともお魚
野菜も取らなきゃダメだよ

僕?
そうだな
僕は何が食べたいのかな

僕はね
お酒が飲みたいな
だって美味しいし楽しくなれるから

シャンパ
そう僕はシャンパンが大好きなんだ
グラスに注ぐと泡立つ黄金色

僕はシャンパングラスを
必ず空に透かして見る
空が泡立って見える

口に含むと
からりと泡立ち
僕の胃袋に染み渡る

その瞬間
僕は幸せだな
そう思うんだ

シャンパンはね
昼に飲むに限るよ
明るい空の下で飲むんだ

自然を独り占めしているかのような
そんな瞬間
でもそれだけじゃないんだ

シャンパンは
特別な飲み物なんだ
だから今日一緒に飲もうよ

教えてあげるから
さあ空を透かして見てごらん
何か見えるだろ

さあやってみて

 

モンシロチョウ


蝶々が飛んでいる
モンシロチョウだ

いつ以来だろうか
蝶々を見たのは

いや
蝶々に気がついたのは

子供の頃
網を持って追っかけた

触ると
白い粉が手についた

毛虫とはうって変わって
美しいその肢体

手から離しては
どこまで飛んでいくのかずっと見ていた

そのモンシロチョウが
いま僕の目の前を飛んでいる

もしかしたら
子供の頃見たあのモンシロチョウかも

実は何十年も生きてきて
僕の周りを飛んできたけど

僕が気づかなかった
だけなのかもしれない

なんて馬鹿なことを考えていたら
モンシロチョウは何処かに行っちゃった

僕の幸せと一緒かもしれない
気づくか気づかないか

もうモンシロチョウはどこにもいなくて
やっぱりな僕の幸せと一緒だ

何処か行っちゃうんだ
そう思ったけど

あのモンシロチョウは
僕の背中に止まっていた

 

太陽

 


宇宙船に乗って
太陽に向かった

太陽はなぜ燃えているのか
一体いつまで燃え続けるのか

おかしいじゃないか
そんなに長く燃え続けているなんて

そんな火事は聞いたことがない
しかも星全体が燃えているなんて絶対うそだ

だからこの目で確かめることにした
あの暖かい僕の太陽

彼の日差しは
僕らを勇気付け生きることを教えてくれる

だから知りたい
あの輝きを

僕らは光合成しているのかもしれない
太陽さえあれば何もいらないのかもしれない

もうすぐ太陽に着く
僕の目の前にはきらめく彼がいる

熱くなってきた
大丈夫

だって太陽は僕の味方
僕の全てだもの

太陽が目の前に迫ってきた
光り輝いている

やっぱりね
燃えているなんてうそだ

太陽はひたすら輝いていた
その輝きは僕らを包み込み

そして
さらなる輝きで僕らを受け入れた

やっぱりね
僕の太陽だ

僕は太陽と一つになった
これからも一緒だ

輝きに包まれて
僕は幸せだった

 

見つめていたい


動物園に行くと
動物たちが僕を見ていた
動物を見に行ったのに
逆に見られていた

スーパーで買い物をしていると
野菜や魚たちが僕を見ていた
そんなはずはないのに
死んでいるのに生きていないのに

喫茶店でコーヒを飲んでいると
なぜだか
他の客が僕を見ていた
店員もずっと僕を見ている

山の中に入ると
一斉に木々がざわめき出した
鳥や獣たちが僕を見ている
僕は彼らを探すが見当たらない

雨が降ってきた
風も強くなってきた
おかしなことに僕の周りだけ
僕だけがずぶ濡れ

おかしいな
何で僕だけ
何で僕だけにこんなことが起こるの
僕は何もしていない

そう何もしていない
僕は何もしていない
だから本当は誰も僕を見ていないし
誰も僕を気にしていない

僕にはやるべきことがある
僕にはすべきことがある
やろうよ
できるから

僕はみんなを見たい
そしてみんなに見られたい
みんなと一緒にいたいから
僕は一人じゃないから

それは僕しだい
君が僕を見ている
僕も君を見ている
みんなが見ている

それが一緒にいること
一緒に生きること

君や僕
自然たち
見つめていたい