冬眠


冬眠をする動物たちがいる
長い寒い冬を
夢を見ながら眠り続け
暖かい春に起き出す動物たち

彼らにとって
寝ている時と
起きている時
どちらが生きている時なのだろう

どっちも同じ
そうだろうね
であるならば
幸せな生き方かもしれない

僕も冬眠がしたい
気持ちのいい夢を見ながら
寒い厳しい冬を知らないまま
眠り続けたい

だって
眠っている時も
生きている時も
同じ生きている時なんだから

だから
僕は眠っていたい
ずっと
いい夢を見ながら

愛されながら
愛しながら
ずっと
そんな生き方をしてみたい

だから
僕は眠りたい
眠っていたい
幸せになりたいから

 

 

水族館


水族館
たくさんの魚が
水槽の中を泳いでいる

口をパクパクさせて
餌を求めているのか
どこに向かっているのだろう

彼らは
何を思って
泳ぎ続けているのだろう

あの太陽の眩しさ
あの海の青さ
そしてどこまでも続く海の深さ

それを知らず
いや
知っていたのかもしれない

彼らは
どこに向かっているのだろう
僕も

そう思ったら
僕は
魚になっていた

水槽の中で
あてもなく
泳ぎ続ける

一匹の魚
どんな魚なのか
オスなのかメスなのか

そんなことは関係なかった
ただ泳いでいるだけ
餌を頬張っているだけ

水槽の外に
人が見えた
こちらを見ている

目は水槽を見ているようで
そうではなく
ただ漠然と息をしているだけ

何のために水族館に来たんだろう
それより
何のために生きているんだろう

そう思って
よく見たら
僕だった

 

触れる


ねえ
僕の手を触って
僕の体を撫でて

ねえ
僕のこと好きかい
好きじゃなくてもいいさ

ねえ
触ってもいいかい
きっと気持ちいいはず

ねえ
お互いのこと
知らないよね

ねえ
僕らは
誰なんだろうね

ねえ
触ってもいいかい
触りたいんだ

ねえ
僕のことも触ってよ
ギュッとつかんでよ

ねえ
お願いだよ
僕らは愛し合っているんだ

ねえ
気持ちいだろ
僕らはこのために生まれてきたんだ

ねえ

 

助けて


雪が溶けると
どうなるのだろう
僕のこころは
晴れるのだろうか

寒い冬が終わり
暖かい日が差し込み
緑の木々に囲まれると
僕も生まれ変わるのだろうか

僕を知ってるかい
僕は知ってるよ
君のこと
君たちのこと

でも
君や
君たちは
僕のことを知らない

いいんだ
それでいいんだよ
僕は知られるため生きているわけじゃない
君たちを知るために生まれてきた

だから
僕は
僕が知らないうちに
生まれ変わるのかもしれない

僕のこころは
僕のものだけど
僕のものじゃない
だから助けてくれないか

 

今日


今日は何の日
何の日でもない
ただの日曜日
とても天気がいい
ただの一日
こんな一日

太陽の光を浴びに
外に出る
突然そらは曇りだし
雪が舞い散り始めた
そんな一日
惨めな一日

それでも僕は
あの場所に向かった
丸い丸い地球がみれる
海に面したあの岬
素敵な一日
寂しい一日

僕の人生は
僕のものであって
僕のものではない
だから
こんな一日だって
あんな一日だって

自然はすべて分かっている
今日僕が来ることも
僕に何もないことも
だから
今日という日は
僕のものでも君のものでもない

僕らは生きているようで
そうではない
僕らは生かされている
そういう生き物
こんな一日
あんな一日

全てに意味がある

 

僕と君と

僕は僕であって僕ではない
僕は僕にしかできないと思っていたが
僕は僕にしかできないことなんてないことを知る
僕は僕だけができないことを知る
僕は僕じゃなくて僕でないことを望む
僕は僕だから僕でないければならない

僕は僕であって僕ではない
だから
僕は僕になりたい
僕は僕にならなければならない
僕は僕であればいい
だから
君よ
君も君であればいい

僕と君と
僕らは僕らであればいい
僕らは僕と君で
他の誰かではない
だから
僕らは僕らであろう

落し物


忘れやしない
あの時
僕の膝の上から
何ががずり落ちた

新幹線に乗っていた
いつものように
眠りかけた頃
僕の膝の上から
何かがずり落ちた

その瞬間
いけない
直感的にそう思った
そして
落ちた辺りを
探した

だけど
目に見えるものはなくて
手に掴めるものはなくて
まずい
それだけはわかった

僕は
わかった
これまで
僕を守ってきた何か
それが
僕からずり落ちたと

何を言っているのぁ
そう思うかもしれない
でも
本当のこと
僕の大切な何か

僕はなくしてしまった
誰か知りませんか
僕の大切な何か
誰か知りませんか
大切なものなんです

お願いです
だれか
見つけてください
僕の大切な何かを