たくましさ

 

救急車で運ばれたんだ

お腹が痛くて

気持ち悪くて

もうどうしようもなかったんだ

 

救急員の人たちは

優しくて

強くて

頼もしくて

 

僕を病院に運んでくれて

僕を介抱してくれて

病院の医者たちに治療させてくれた

僕はしばらくして良くなった

 

救急員の人たちは

何事もなかったかのように

いつのまにか

いなくなっていた

 

僕は良くなったから

帰ろうとして病院を出たら

救急車がやってきた

あの救急員たちが患者を運び入れている

 

救急員たちは

僕に目もくれず

患者を病院に運び入れていた

僕は恥ずかしかった

 

駅までの道

僕はトボトボと歩いていた

弱ったからだ

弱ったこころ

 

そのとき

後ろから車

ふと振り返ると

あの救急員が僕に手をふっていた

 

 

 

ご馳走

 

なまこって

誰が食べようと思ったんだろう

食べ物に見えやしない

 

毒キノコ

食べられるもの食べられないもの

見ただけじゃわかりやしない

 

ウニ

キモチワルイ

だけどクリーミーでとっても美味しい

 

パクチー

何なのこの味この匂い

意味不明

 

うなぎ

蒲焼だって

こんな蛇みたいなものをどうやってこんなに美味しくしたの

 

人間って食い意地がはってるよね

何でも食べなきゃ気がすまない

なんとか料理して食べようとする

 

でも最初に取り組んだ人は天才だ

毒で死んじゃった人もいたかもしれない

独り占めしちゃった人もいたかもしれない

 

でも天才だ

発見だ

ノーベル賞ものだ

 

いやノーベル賞

だから感謝して喜んで食べる

当たり前と思っちゃ悲しすぎる

 

世の中の当たり前は

決して当たり前じゃない

美味いも不味いも自分次第

 

自分で決める

自分で見つける

自分で発明する

 

それをみんなに分け与える

それが幸せ

それが代々続いている

 

僕らはその一員

だから見つけなければならない

僕らだけのご馳走を

イチゴちゃん

 

イチゴちゃん

不思議な食べ物

 

なぜこんな形をしているの

種がいっぱいついているし

 

あまくて

すっぱくて

 

練乳で

潰して牛乳で

ジャムにして

ミキサーにかけて

いやいや

そのままパクリ

 

イチゴ味のアイスだって

飴玉だってある

 

ぜんぶ美味しい

イチゴちゃんはなぜイチゴなの

 

幸せだな

イチゴちゃん

 

いちご狩りの風景

みなも幸せそう

 

イチゴちゃん

美味しいだけじゃないんだね

 

僕もそんな自分になりたいよ

イチゴちゃん

 

なあ

イチゴちゃん

 

名もなき場所

 

僕はね

行くことにしたよ

 

宇宙船に乗って

遥か彼方

 

イスカンダルより遠いところ

名前は知らない

 

なぜ行くかって

それは知りたいから

 

僕が誰かを知りたいから

そこに行けばわかるらしい

 

誰に聞いたわけでもない

僕は知っているんだ

 

それを知って何になるのかって?

そうだな

 

君にはわからない

だってこれは僕の問題だから

 

僕はね旅に出るんだ

でも実は今も旅の途中なんだけどね

 

君にあえてよかった

本当さ

 

だって僕のこと知ってもらえた

こんな嬉しいことない

 

だからさよならさ

また会うことはもうない

 

僕は行くんだ

名もなき場所へ

 

アディオス!

土曜日の朝

 

酒場で酒を飲んでいたら

だんだん楽しくなってきて

饒舌になって

笑えるようになって

大胆になって

色んな話をしたくなって

眠くなって

寝てしまったら

いつのまにか朝になっていて

僕は銀行のシャッターの前で寝ていて

なんてことはなくて

暖かな真っ白な布団の中にいて

突然

昨日のことを思い出して

なぜかわからないけど

とても後悔して

情けなくて

恥ずかしくて

でも

どうして

なぜだろう

そう思って考えたら

酒場の僕は僕ではなかった

僕は僕から逃げ出していた

それに気づいたから

後悔している事に気づいて

ずっとそんな事ばかり考えていたから

冷蔵庫を開けて

ビールを取り出し

一気に飲み干したら

いつもの僕は酒場の僕になってしまって

いままでの僕は死んでしまった

いや

僕は僕を殺してしまった

そんな土曜日の朝だった

変わってしまった

 

忘れてしまっていた

 

あんなに楽しかったこと

嬉しかったこと

 

忘れてしまっていた

 

あんなに悔しかったこと

情けなかったこと

 

忘れてしまっていた

 

あんなに寂しかったこと

悲しかったこと

 

忘れてしまっていた

 

忘れる前の僕のこと

僕という人間のこと

 

忘れてしまっていた

 

忘れ方を

そして生き方を

 

忘れてしまっていた

 

僕はなぜここにいいるのか

僕は何をしているのか

 

忘れてしまっていた

 

忘れてしまったものを

忘れてしまったことを

 

僕はもうここにはいなかった

変わってしまった

 

この街は

変わってしまった

 

ここに住む人たちも

変わってしまった

 

みな老いぼれて

疲れ果てていて

 

どこにいくこともできず

ただ陽のあたる場所を探して

 

一日中じっとしているだけ

その目は何も見ていない

 

その街で変わらないものもある

僕だ

 

そう思っている僕だ

変わったこともわからない

 

変わることが何なのかもわからない

そんな僕は今日も同じ毎日を送っている

 

変わっちまったな

そんなことを呟きながら