すばらしい人生


朝 目が覚めると
背中がムズムズして
おかしいな
そう思って服を脱ぎ
鏡を見ると
羽が生えていた

天使になったのか
死んじゃったのか
そう思ったけど
そんなことはなくて
どうしたらいいのか
わからなくて

羽を動かしてみた
手や足を動かすように
僕の思い通りに動いた
動いた羽を広げようとしたら
部屋の壁にぶつかってしまい
外に出た

誰もいない山の中で
上半身裸になり
思いっきり
羽を広げてみたら
とても大きくて
びっくりした
飛べるのかな

ゆっくり
大きく
羽を動かしてみたら
ものすごい風が巻き起こって
僕は一瞬で空の上に飛び立った
すごいことだ
僕は飛んだ

空の上は
冷たくて
でも
川の流れのように
空気の流れができていて
まるで道のように
進む場所が決まっていた

鳥たちも
自由気ままに飛んでいるようで
実は空の中にある道を
飛んでいた
知らなかった
空にも道があることを
それより
僕が飛べるということを

僕は何か特別な
ものになったかのように
優越感を持って
大空に飛び立ち
世界の特別な存在
になったかのようで
とても誇らしい気持ちになった

変な音がして
次の瞬間
僕は地面に叩きつけられていて
すぐに犬が僕を見つけ出し
それは猟犬で
僕の体には穴が開いていて
血まみれになっていた

銃を持った大人たちがやってきて
笑っていた
僕は人間だよ
羽の生えた
特別な
選ばれた人間だよ
そう言ってみたが

なぜだか言葉にならず
僕は足を掴まれて
大人たちに
ひょいと担がれてしまった
あれ
おかしいな
そう思ったら

大人の目に映った僕が見えて
それはただの一話の鳥で
人間なんかじゃなくて
鉄砲で打たれた
もうすぐ死んじゃう
一話のただの鳥だった

そうか
なんかわかったような気がして
こういうことなんだね
自然とはよくできている
次は何に生まれ変わるのかな
少し楽しみに思いながら
僕は静かに目を閉じた

 

この世


この世は楽園?
それとも地獄
あの世は楽園?
それとも地獄

どっちだろうね
どっちも同じ
大して変わらない
かもしれない

だったら
ずっと一緒にいさせてよ
離ればなれにしないでよ
それともこの世が地獄なの?

僕にとってこの世は何?
楽園?地獄?
どちらでもない
ただの存在

そう
だから
あの世も一緒
ただの存在

だったら
一緒にいさせてよ
離ればなれにしないでよ
それともあの世はないのかな

この世にいる僕
僕にしかわからないことがある
僕にだけわからないことがある
それが現実

現実って何?
いまが現実
だれが正しい
なにが正しい

いったい
なにが本当なの
誰か教えてよ
お願い

僕にはわからない
ただそれだけ
それだけが事実
だから現実ってなに?

誰か教えてよ
僕がおかしいのかい?
だったら
この世はもっとおかしいよ

 

愛する人よ


愛する人
僕は誰にも負けたことがない
無敵の存在
だから
愛する人
僕の人になっておくれ
だって
絶対に幸せになれるよ
愛する人
誰からもうやまれる
そんな生き方がしたいだろ
僕しかいないよ
愛する人
僕は約束する
君を幸せにできるのは
僕しかいないって
愛する人
なぜだい
なぜ君は
他の男のところに
行ってしまうんだ
愛する人
わからないのかい
僕ほど君にふさわしい男はいないよ
何が不満なんだい
愛する人
僕は誰にも負けたことがない
無敵の存在
だから
愛する人
僕は一人で生きていける
無敵の存在だから
だから
愛する人
僕を助けておくれ
僕は知っているんだ
僕はひとり
僕は
僕は

 

おやすみ


眠い
眠いよ
なんで
なんでこんなに
眠いの
僕は
もっと
頑張りたいのに

眠い
眠いよ
眠ると幸せ
だって
すべて
忘れられるから
僕は
こうやって
生きてきた

眠ると
僕は忘れる
辛いこと
悔しいこと
忘れちゃダメだよ
でも
忘れないと
生きていけない

眠りは
僕を
僕の心を
助け
救い
ごまかす
だから
僕は
逃げている

眠い
眠いよ
ダメだよ
寝ちゃダメだよ
死んじゃうよ
起きて
頑張って
でも
ダメだ

眠い
眠いよ
僕は
逃げてなんかいない
ただ
眠いだけ
眠りたいだけなんだ
だから
ごめんね

おやすみ

美しさ


僕はね
最近知ったんだ
造花の美しさ

花は
自然だから
美しい

そのとおり
でも
僕は知ったんだ

造花には
作られた
美しさがあるって

それは
悲しい
ことかもしれない

造花
どんな思いで
誰が作ったのか

造花
本物の方が美しい
でもなんで作るのか

そこには
理由があり
思いがある

それこそが
そのことこそが
美しい

思い
思いを込めた造花
美しさはその思い

僕らは
ものを作り生きている
自然にはかないっこない

知っていて
作っている
僕ら

なぜ造花を作るのか
その思い
美しさ

自然
作られたもの
思い

それぞれの
美しさ
それがわかるようになったのは

誇らしい
自分
美しさ

 

素敵な日々


幸せになりたい
でも
幸せがなにか
僕にはわからない
知らない
 
幸せなのに
知らないという
贅沢
だけど
僕は幸せになりたい
 
なんだろう
それは
今の自分に
満足していない
そういうこと
 
だから
幸せになりたい
それは
違くて
与えられるものではなくて
 
与えるもの
人を幸せにする
それができれば
自分も幸せになれる
わかってる
 
幸せは
歩いてこない
だから
歩いて行くんだよ
こんな歌があったっけ
 
幸せは
与えられるものではない
幸せは
与えることで
自分も幸せになれる
 
素晴らしいじゃないか
ねえ
みんな
幸せになろうよ
僕らはなれる
 
絶対に
なれる
人は愛されるより
愛する方が
幸せなんだ
 
素敵な日々を
 

はじまりの時間


彼女はめちゃモテるんだ
学校中のアイドル
僕なんて彼女を見てるだけで幸せ

彼女は高嶺の花
そうアップタウンガール
そんな彼女

放課後の教室
僕は忘れ物を取りに行く
そこに彼女はいた

僕は見てしまった
彼女は泣いていた
僕に気づくと

彼女は素知らぬ顔で
いつもの綺麗な顔に
戻った

どうしたの
いままで話したこともないのに
僕は声を発していた

彼女は僕を無視した
窓の外を見ている
僕は

僕は
自分でも驚いた
なんでこんなことしたのだろう

彼女の手を握り
大丈夫かい
そう聞いていた

大丈夫じゃないのは僕だ
それなのに
そんなことした僕がいた

彼女は
驚いた顔で僕を見た
でも手は離さなかった

しばらく
そのまま
時間が過ぎた

彼女の手から
ざわつきが消えていくのが
なぜだかわかった

ありがと
彼女は
僕を見て笑った

そしてこういった
君のこと
知らないよ

僕は
笑ってうなづいた
誰だっていいじゃん

彼女も笑った
ふたりは
手をつないだまま

そう
手をつないだまま
教室を出て行った

ふたりの時間が始まる
そんな宇宙の
とある時間