風に吹かれて


風が吹いている
強い風が
何もかも吹き飛ばすような
冷たい風が
吹いている

風は
どこから来て
どこへ行くのだろう

風は
何を連れて
誰を連れて

風は
どこへ行こうと
しているのだろう

僕は風に抗い
歩いていた
だから連れて行ってもらうことにした

だって
目的地がなかったから
歩く目的もなかったから

だけど
断られた
風に

君を連れてはいけない
僕には目的がある
連れて行く人も決まっている
だから
時に強く
時に冷たく
吹くんだ

僕は聞いた
いったい誰を連れて行くんだい
そして君の目的はなんだい

風はそんなことも知らないのか
そう言うと笑って
何も答えずに行ってしまった

僕は風に吹かれながら
その場に佇んでいた
どこへ行くこともできなかった

でもしばらくたつと
なんかわかったような気がして
歩き出してみた

一緒なんだ僕も風も
僕が風なんだ
僕は風に吹かれながら歩き出した
 

眠り


僕はね
眠ることが大好き
うつらうつら
まどろみに身を任せ
最高の瞬間

眠るって楽しいよね
嬉しいよね
夢が観れる
あの懐かしい日々が蘇る
素敵な日々

眠ることがそんなに楽しいのなら
ずっと眠っていればいい
ずっとまどろんでいればいい
だけど
それて死ぬこと?

そうかもしれない
でも生きながら死ぬこと
それが眠ること
だから気持ちいい
素敵な瞬間

さあ みんな
今日も眠ろう
眠るのを削って何してるんだい
眠ろうよ
だって

それが
この世で一番楽しい瞬間
僕だけのものだから
君だけのものだから
僕らだけのものだから

さあ
眠ろう

 

旅立ち


僕はね
寂しがり屋で
怖がりで
いつもびくびく怯えては
いいことありますようにと
祈ってる

僕はね
幸せ求めて
旅をして
いつも何かを求めては
何も得られぬ自分がいて
時が過ぎるの焦ってる

僕はね
どうにかしたいと思ってる
どうにかするがわからない
どうすればいいのかもわからない
いつも聞いていたからね
いつも安心してたからね

僕はね
それでも自分で生きていかねばならない
それを知ってる自分も知ってる
だから旅に出なきゃならない
行くあてなんかないけどね
行き先わからず目標立たず

僕はね
それでいいんじゃないかと思ってる
決して諦めなんかじゃない
ごまかしなんかでも全くない
僕は僕であるために
ずっと考え続けてきた

僕はね
僕は僕のままでいいんじゃないか
最近やっとそう思えた
もちろん諦めなんかじゃない
ごまかしなんかでも全くない
僕は僕でしかないのだもの

僕はね
僕のままでいるよ
だってこれまで生きてきて
僕は僕のままだったんだから
今更何を変えようとするの
変える必要ないんだよ

僕はね
僕なんだ
僕でしかないんだ
ようやく気付いた
ようやくわかった
だから旅に出るんだ

一緒に行ってくれるかい

 

 

幸せな日々


家に帰ると
手紙が届いていた
なんだろう
誰からだろう
セールスかな
そう思いながら
部屋に入り
封を切ると
写真が入っていた

懐かしい
僕の昔の写真
満面の笑み
まわりにいる人間も同じ
メモが一枚入っている
こんな写真が出てきました
幸せでしたね
そう書いてあり
差出人の名前はなかった

けど誰かはすぐわかった
差出人の住所は書いていない
なぜ僕の住所がわかったのだろう
不思議に思いながらも
昔のことだ
たまたま懐かしい写真が出てきて
持っていてもしょうがないから
送ってきたのだろう
そう思い僕は寝てしまった

夜中に目が覚めて
あの写真のことを思い出した
笑っていたな
僕もみんなも
よく考えたらずっと笑ってないな
こころからの笑い
そんなことを考えていたら
朝になっていた

机の上にあった昨日の写真に目が止まった
いつ頃の写真だろう
写真には日付が入っていた
6年前の今日だった
忘れもしない
あの日だった
その日は僕の誕生日で
そう僕には仲間たちがいた
僕はお祝いをしてもらっていた

それはそれは楽しい
幸せな瞬間
素敵な瞬間
ずっと続けばいいのに
そんなふうに思っていた
忘れもしない
その日の帰り道
僕は車にひかれて死んじゃった

そうか今日は七回忌なんだな
そんなこと思ったら
僕は眩しい光に囲まれて
とんでもない幸福感に包まれて
そうか
僕は幸せだったんじゃないか
思い出して
本当に幸せになった
 

 

発見


不思議な夢を見た

湖の上
ボート
手漕ぎの古いボート
僕は
一人で
漂っていた

湖面に映る
自分の顔を見るのだけど
どうしても
見ることができない
一生懸命覗き込むのだけど
僕の顔が映らない

おかしいな
オールを持って
湖面に打ち付けた
大きな水しぶきが上がり
僕の手にかかった
そこに僕の手はなかった

僕の姿はなくなっていた
ボートには誰も乗っていなかった
そうなのか
それじゃ湖面に映るはずないよね
そう思った僕は
あれ 僕はどこに行ったのかな
そう思ったら目が覚めた

不思議な夢だな

起きたはずの僕の姿はどこにもなかった
あれ おかしいな
なんでだろう
そうおもったけど
そう思う僕はもうどこにもいなくて
そうか
最初からいなかったんだ

僕はようやく気づいた

 


空を飛びたい

飛行機やヘリコプターや
ハングライダーや
なんだっていいや
でも

自分で飛びたい

羽を広げて
ぐんぐん上昇していく
そこから一気に急降下
風に乗って滑空する

そんなことができたら

人間じゃない
そうかもしれない
でも飛べる生き物がいる
僕らも飛べるかもしれない

やってみる?

飛び降りるんじゃない
飛び立つ
飛ぶんだよ
どうしたらいいのだろう

無理だよ

だって僕らは鳥じゃない
人間だもの
だから道具を使う
発明してきたんだ

でも

飛びたい
自分で飛びたいんだ
どうしたらいい
どうすればいい

なぜ

なぜ君は飛びたいの
そこが大事だよ
飛ぶ理由
教えてよ

理由なんてない

そうか
君は夢を見ているだけ
いやちがう ただの夢想空想
あったらいいなできたらいいな

バッカじゃないの

もう少し
真面目に考えろよ
それか
夢想空想を現実にしろよ

それならできるよ

絵でもいい
音楽でもいい
映画でもいい
その中なら飛べる

飛べるよ

憧れるだけじゃダメなんだ
発明しなきゃ
自分で作り上げるんだ
空想夢想を

すばらしいよ

それは夢であって夢で無くなるんだ
現実じゃないけど現実になるんだ
ほら見つけたじゃないか
やりたいこと

頑張れよ

 

存在


楽しそうに
家族連れが
向こうから歩いてくる

僕のことなど
気もつかず
僕のことなど

嬉しそうに
笑っている
これから野球観戦のようだ

僕のことなど
知りもせず
僕のことなど

同じような服を着て
同じ場所で買うのだろう
笑いながら買うのだろう

僕のことなど
存在も
不明だ

僕はなぜ服を着ている
誰に見せる服なのか
それなら裸で構わない

だって誰も見ていない
誰も気づいていない
誰も

僕のことなど
存在も
不明だ