大波


テレビを見ていた
大波

35メートルもの大波
乗ろうとしている男たち

ビッグウエーブサーファー
そう呼ばれているらしい

なぜそんなことをするのか
彼らは世界一になりたいと言っていた

怖くないのか
波にのまれて苦しくないのか

世界一になると何がいいのか
楽しいのか

そんなこと思ったけど
そんなことはどうでもよくて

他にすることがないのだろう
そう思って

そう思ったら
一緒

みんな一緒
そう気がついて

僕らは暇なんだ
だから何しようが勝手

そう思って
テレビを消して外に出た

 

大きな葉っぱ


ウンベラータの大きな葉っぱ
そっと顔を当ててみた

ひんやりして
温かかった

耳を当てると
何かが聞こえる

シーンとした中に
何かが聞こえる

ウンベラータは一年に一回
すべての葉を落とす

その時どんな気持ちなのか
聞いてみたかった

いつも部屋の中にいて
僕らのことをどう思っているのか

何を思っているのか
聞いてみたかった

葉っぱは静かに僕に語りかける
言葉ではない

葉っぱの厚み
大きさ

その存在感で語りかける
僕は安心して幸せな気分になる

それがウンベラータの言葉
僕は葉っぱにそっと口をつける

いとおしい
そんな気持ち

それが僕の言葉
ふたりだけの幸せな会話
 

人生ゲーム


人生ゲームをした
車に乗って

就職して
給料をもらって
結婚して
家を買って
子供が生まれて

ルーレットを回して
前に進むだけ

株券を買って
資産の値上がりを期待して
転職もしたりして
すべてお金のため
お金のための人生

だって目的は
大富豪

それが人生の目的
ゴール

なんだ
一緒

現実も
一緒

人生ゲームはゲームだけど
僕の人生はゲームじゃない

だから
一緒じゃない

お金持ちや
大富豪にもなりたいけれど

それだけじゃない
それだけが目的じゃない

人生ゲームのゴール
なんだと思う?

大富豪
その通り

でも違う
ゲームを楽しむこと

家族で
友達で

一緒にゲームをして
笑い楽しむこと

だから
一緒

現実も
一緒

人生は楽しむこと
笑い喜び合うこと

それが僕の人生
人生ゲームと一緒

 


雨が降ってきた
僕は傘を閉じた

大事な大事な
雨だもの

体中に雨を染み込ませたくて
僕は服を脱ぎ捨て

頭から雨を浴びた
滴る雨は僕の視界を曇らせ

そこには
光り輝く世界が広がっていた

僕は頭上を見上げる
きらめく雨粒

空から
僕に突き刺さる

そして僕は
その美しさに心ときめく

雨にはこの世界のすべてが凝縮されている
雨は僕自信であって僕のこころ

この世界のすべて
この世界の心がここにある
 
 

時計


時計を見ていた
時が進むっていうけど

時計を作ったのは僕らで
時を進めているのは僕らではないから

時計にはなんの意味もなくて
それなのに時計は健気に秒針を進めていて

僕らはつまらないものを作るな
そんなことを思ったから

家中の時計の針を
めちゃめちゃな時間にしてみた

好きに動けばいい
好きに時間を刻めばいい

時計の好きなように
遅かったり速かったり

好きなように
時を刻めばいい

そうしたら
僕も

僕も自由になった
時に縛られなくなった

僕は時計に操られていた
そんなことに気づいた

僕らはつまらないものを作るな
それがわかって

僕の人生は一変した

 

さくら


桜の花びらが
降り注ぐ

僕の頭に
僕のこころに

花びらは
花びらのようで

実は
花びらではなくて


あの真っ黒な木の涙

嬉しくて
悲しくて

一年に一回
可憐な涙を流す

その滴に
打たれた僕は

一年に一回
齢の重なりを知る

キレイだな
そんなことをつぶやく

よく見てご覧
本当に美しいのは

あの真っ黒な木
そのこころ

一年に一回
思い出すがいい

桜の季節

 

またね!


手を振っていた

バス停で
園児たちが

手を振っていた

動物園で
木の上の猿が

手を振っていた

駅の改札で
別れを惜しむ恋人が

手を振っていた

車のバックミラーに
見送るふたり

手を振っていた

もう会えないこと
わかっていた

手を振っていた

広い広い公園で
僕に気づいてほしくて

手を振っていた

楽しかった日々
探してる

手を振っていた

大きく手を振っていた

僕を見つけて
僕はここにいるよ

また会おう
きっと会えるから

僕は今日も
手を振っていた