マグロを釣っていた
漁船ではない
白いクルーザー
男たちが笑い
嬉しそうに竿を動かしていた
餌は疑似餌
グラスファイバーの竿は
大きくしなり
みな滑稽に
上に下に竿を振っていた
なぜ釣るのか
しんどいから
楽しそうに
男たちはそう言って
日焼けした顔で笑っていた
マグロがかかった
やった
羨望の眼差し
いけいけ
男たちがはしゃぐ
マグロが釣り上げられた
100キロ以上の大物
船上でのたうち回る
その横で男が横たわり
一緒に記念写真を撮っている
すると
男がマグロを海に離した
弱り切ったマグロが海に落ちて行く
なぜ
何をしているんだ
スポーツフィッシング
魚を傷つけないよう
最新の注意を払っているらしい
男たちは言う
マグロは大切な仲間
そんなことがあるわけない
弱ったマグロは弱ったまま
体も精神も
それなのに笑っている
楽しそう
同じ笑顔でも違う
漁師の笑顔
マグロを釣り
生きる糧を得て
そして食う
それがマグロに対する敬意
だから笑顔
心からの笑顔
僕は心から笑える生き方がしたい
そんな仲間と会いたい
そう思う
時計
時計が動いている
カチカチ
音を立てている
いつもは気づかない
カチカチ
時を刻んでいる
知らないうちに
いつも時計を見て
焦っている
もうこんな時間
まだこんな時間
何もしてない
何かしなくちゃ
そんなこと構わず
カチカチ
時計は時を進める
いつのまにか
時は進んで
一日が終わる
決まった時間に食事をして
決まった時間に布団に入り
決まった時間に起きる
焦っても焦らなくても同じ
何をしたかではなく何をするか
時は進む
時は時計回り
逆には回らない
だから前を向いて過ごせばいい
思ったことをすればいい
そうすれば
時がついてくる
そんな一日を
送っていければいい
カチカチ
限られた世界
気球が飛んでいる
駕籠をぶらさげ
人が乗っている
誰が考えたんだろう
どこに行こうとしたんだろう
風船が飛んでいる
綺麗なピンク色
手を離しちゃったのかな
それとも結婚式だろうか
どこまで飛んで行くんだろう
鳥が飛んでいる
いつもみんなと一緒
どこに行くのも一緒
家族かな
どこに住んでいるんだろう
飛行機が飛んでいる
綺麗な青空に
飛行機雲
みんなの笑顔が見えるよう
どこか旅行に行くのだろう
ミサイルが飛んできた
なんで発射したの
自分を守るため
気にい入らないあいつをやっつけるため
どこの誰のためなのだろう
空を旅するものは
一種の特権だ
あの雲だってそう
そこに入りゆく僕ら
何のためなのだろう
行き先はこの地球のどこか
限られた世界
それなのに空に向かう
急ぐ必要なんてないのに
空を旅する僕ら
どこに向かうの
僕らはどこに行きたいの
何をしたいの
何かしたいの
ただここにいたいだけなのに
絵を描く
絵を描いたんだ
下手くそだけど
一生懸命
綺麗な色で
丁寧に
一生懸命
それでも下手くそで
自分でも笑っちゃうけど
なんか楽しい
僕の絵を見て
みんなが笑ってくれたら
もっと楽しい
だから絵を描く
下手くそだけど
一生懸命
それが楽しさ
嬉しさ
喜びだから
猫背なのには
君の背中
ピンとして
いつも姿勢が良くて
なんか凛々しくて
堂々としているけど
しなやかで
不思議な佇まい
不思議な空気
不思議な君
それにひきかえ
僕は猫背で
いつも俯いて
自分の足を見ながら
一歩一歩
トボトボと歩いてる
そんな時
いつも背中を叩かれて
ピシッとしなよ
そう言われても
すぐに俯いて
自分の足を見てる
自信がないわけじゃないけど
自信がないのだろう
気がつくと下を向いている
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
そんな歌があったっけ
僕は涙を流すことがなかった
だからいつも俯いていたのかもしれない
幸せだったからなのかもしれない
背中伸ばしなよ
そう言われて背中を叩かれる時
僕は気づく
空の素晴らしさ
太陽の眩しさ
気づかせてくれたのは彼女
彼女がいる
目を合わせて
すぐに俯く
僕が俯いているのは
自分の足ばかりを見るのは
猫背なのは
君のせい
ピシッとしなよ
また新しい何かに気づく
そんな僕
幸せな僕
幸せな僕ら
できること
AI
人工知能
車は自動運転
ロボットがなんでもやってくれる
人間の仕事がなくなる
コンピュータが人間が取って代わる
そんな時代がやってくる
みな嬉しいの?
現実のことと思っていないだけ
自分は大丈夫と思っているだけ
なんでもそう
戦争や飢餓や難民なんて遠い国の話
ミサイルなんて飛んでこない
誰かが助けてくれる
自分だけ
自分だけがよければ良い
そんな虫のいいことないのに
そんな権利ないのに
車は自分で運転できるから自由
僕らは仕事をしなければ生きていけない
それだけ
ただそれだけなのに
わかってる
皆わかってる
想像すること
それしかないこと
自分がすべきこと
するしかない
それしかできないから
できることをする
それだけ
ただそれだけ
それでいい
想像しよう