大事なこと


僕はね
寂しがり屋で
臆病で
それでいて見栄っ張りで
プライドばっかり高くて
いつも相手を見下して
自分に嘘をつきながら
生きてきた
 
彼女はね
寂しがり屋で
臆病だけど
そんなことは心の中
常に前を向いて
上を向いて
誰にも優しく頼もしく
力強く生きていた
 
そんな彼女が僕に言ったこと
君は君であればいい
言われた僕は驚いた
もっと頑張んなよ
そう言われると思ってた
だけど彼女はお見通し
君は君であればいい
僕の目を見てそういった
 
僕はわかっていた
しなきゃいけないこと
すべきこと
だけどできない自分がいた
しようと思っても
できない自分がそこにいた
そんな僕のこと
とっくに彼女はお見通し
 
人はね
できるできないじゃないの
知ってるか知っていないか
知ろうとしているかしていないか
それが大事なの
だからあなたも私も同じ
そんなあなたで居続けて
彼女は笑ってこう言った
 
僕は
なんか気持ちが楽になり
いつものように空を見上げたら
そこには
いつもと違う空があって
前に向き直って
彼女の顔を見つめたら
愛しい想いが湧き出した
 
 

世界


ペロペロキャンディー
を舐めていたら

大の大人がおかしいね
そんな目で見られて

少し恥ずかしかったけど
かまうもんか

ペロペロキャンディーは透き通っていて
かざして前をみると

世界中が真っ赤になっていた
少しゆがんできらめいていた

なかなか綺麗な世界だな
こっちが本当の世界かも

そう思いながら
その世界を一気に舐め込んだら

目の前の世界が消えて
僕は一人になってしまった

そこは白く輝く何もない世界
僕は一人で立ち尽くしている

そうか僕が世界と思っていたのは
僕が思っていたからで

本当は何もない
何もないんだなあ

そう思ったら
僕も消えてしまった

本当は何もない
僕もいないんだ

一瞬だけそう思ったけど
もう僕はそこにはいなかった

 

自然と僕


朝起きると
雪が降っていた
不思議なことに
しばらくすると
雪はやみ
突然 青空が広がりだし
あたり一面を陽が照らし出した

まるで
別世界のようだった
わずかな時間の中で
自然は
新たな舞台を
作り上げてしまう
誰がシナリオを書いているのだろうか

それを見ていた僕は
僕のこころは
自然の圧倒的なパフォーマンスとは異なり
一向に動く気配はなく
どんよりと
重たい
雲が広がっていた
広がり続けていた

なんでだろう
そんなことばかり考えるものだから
雲は広がり続け
やがて雨も降り出し
バカな僕は
どうせ降るなら
雪の方が綺麗なのにな
なんて思っていた

悲しくて
寂しくて
でも
何もする気が起きなくて
ぼうっとしていたら
いつの間にか僕は空気になっていて
あたり一面の自然に溶け込んで
自然の一部となっていて
心が癒されていくのに気づいた

そうだったのか
自然はすごいな
そんなことを考えながら
いったい誰がシナリオを書いているのかな
またそんなふうに思って
後ろから声がして振り向くと
あの人が立っていた

 

不思議なこと


不思議だ
みんな何を信じて生きているのか
それとも信じていないのか

不思議だ
相手が言うことを鵜呑みにしてはいけないのか
信じてはいけないのか

不思議だ
だってそうだろ
相手を騙すための会話なのか

不思議だ
そんなの何の意味があるっていうんだ
やるべきことをやればいいじゃないか

不思議だ
そう やるべきことがあるはず
なぜしない

不思議だ
それでうまくいかなければ
言い訳たくさん考えて

不思議だ
それに何の意味があるっていうのさ
小学生だってわかる

不思議だ
これが世の中
わからないのがバカだって

不思議だ
バカな奴が利口で
利口な奴がバカだなんて

いいじゃん
一緒じゃなくて
自分は自分で

正しいことをやればいいじゃん
不思議なのは
ほっときなよ

いいじゃん
思ったことすれば
正しいことすれば

いいじゃん
だって正しいんだもん
それが正解さ

それをしないほうが
不思議さ

 

never


love is over
そんな歌があったっけ
悲しい歌
でも僕は違うことを思っていた

life is over
これが今の僕
人を愛することさえできない
どこにも行くこともできない

over
そう
すべて終わったんだ
あとは待つだけ

待つわ
そんな歌もあったっけ
僕は何を待っているのだろう
あの人でないことは確か

待つわ
僕は受け入れる
何が起きても受け入れる
そんなわけないだろ

i am over
終わってなんかない
僕は終わってなんかいない
あきらめない

never
決して
あきらめない
まだできることがあるはずだ

僕を知っている誰かがいる限り

 

コーヒー


一杯のコーヒーを
ぐっと飲み干したら
僕はコーヒー豆になっていた

ここはブラジルだろうか
どこだっていい
暖かな場所だ

僕は広大な土地の
一本の木から生まれた
たくさんのコーヒー豆だった

汗をかいた男たちがやってきて
僕らを木からむしり取って行く
一本の木との別れ

何を言うでもなく
涙を流すわけでもなく
ただの別れ

いつの間にか
僕らはコーヒー豆になって
袋に入れられ

スーパーに陳列されて
ミルで砕かれ
粉々になって

熱いお湯を注がれ
身体中のエキスを抽出され
カップに注ぎ込まれ

知らない人間の口から
飲み込まれ
胃袋に入るのかと思ったら

飲み込んだ人間自身になっって
うまいな
そう思っている僕がいた

 


僕は騙されていた
嘘をつかれていた

僕は嘘つきだけど
嘘と知らなかった

僕に嘘をつく人は
嘘を知っていた

僕が悪いんだ
僕はそう思う

僕が間抜けなんだ
僕のせいなんだ

だから
騙されないようにしよう

そう思うけど
そうできない

なぜか
僕が間抜けだから

僕を騙そうとすること
僕に嘘をつくこと

それも
僕がいるから

僕は人を騙したりしない
僕は嘘を知っていて嘘をつかない

それでいいじゃないか
それが僕だから