僕だけの秘密


月曜日の朝
電車に乗る

みんな無言で
険しい顔

朝なのに
疲れた顔

土日に
遊び疲れたのか

これから始まる一週間
気の重い顔

電車が川を渡る
川の向こうに朝日が輝いている

僕は声をあげそうになった
すごい景色だ

金色に染めあがった空
その輝きがあたり一面を照らす

川面が輝き
無数の鳥が光っている

緑の草木は
みずみずしい光を放ち

空気全体が
その景色を引き締めている

僕は思う
どんな景勝地にも負けない景色

ここにいるみんなに教えてあげたい
遠くに行かなくても絶景は身近にある

渋滞に巻き込まれなくても
人混みをかき分けなくても

素晴らしいものはここにあるじゃないか
みんなに教えてあげたかったけど

僕だけの秘密にしておくか
そう思って笑っちゃった

 

焦る


僕は毎日焦っている
焦る必要なんてないのに

何に焦っているのか
わからないのに焦っている

朝起きて天気が良いと
焦る

休みの日の午後
焦る

遊園地に出かけると
焦る

美味しいものが目の前に運ばれると
焦る

朝起きると
焦る

彼女が目の前に立つと
焦る

何に焦っているのか
わからない

本当はわかっていた
僕はわかっていた

何もしていないことに焦っていること
何もない僕に焦っていること
何もないと思われることに焦っていること

僕はわかっていた
人と比べて焦っていることを

だから僕は焦るのをやめた
焦らない僕とはなんなのか見つけることにした

そうしたら
以外や以外

色んなことをしている僕がいた
自信を持ってしている僕がいた

なんだ考えること
してなかっただけなんだ

だからノートとペン
持って出かけよう

そして考えよう
書こう

考えること
それが気づくことだから

 

急ぐ


朝起きると
なんだか知らないけど

急ぐ
とにかく急ぐ

早く早く
急げ

ご飯を食べ
歯を磨き
トイレに入り
髪を直し
服を着替えて
出かけていく

外に出ても
急ぐ

早足で
駅に向かう

ホームで
電車を待つ

座りたいな
座れるかな

もっと早く家を出れば
楽に座れたかもしれない

電車のドアが開く
席取り競争

やった座れた
なんかホッとして本を開く

でもすぐに閉じて
何やら考える

そこで思う
僕は座りたいのかな

なんで
僕は急いでいるのだろう

そんなに座ることが大事なの
座ってどうするの

次の日の朝
僕は座れたけど座らなかった

立って見た
そうしたらそれはそれで悪くなかった

外の景色も良く見えるし
本だって読める

そんなに混んでいない電車だから
かもしれない

でも座る理由なんてない
そう思った

僕は毎日急いでいる
何をするのも急いでいる

急ぐ理由なんてない
そんなことも気づかずに

ただただ急いでいる

それに気づいた

楽しもう


テレビを買い替えて
新しいスピーカーを繋げたら
なんだか
幸せだった

セーターを買いに出かけて
カシミアの
胸にはワンポイント
グレーでかっこよくて嬉しかった

スーパーに行き
色んな具材を買い込んで
一日かけてカレーを作ったら
とても美味しかった

家具を買いに行って
ブルーの綺麗な色の棚
部屋を片付けたら
みんなが笑顔になった

買い物の帰り道
車で海に立ち寄って
防波堤を散歩したら
心が満たされた

仕事をするのはお金のためだけじゃない
お金では幸せになれない
そういうけど
お金を使うことで幸せになれることもある

だったらそれもいいじゃない
お金を使うことは大切なこと
そのために仕事をすればいい
お金は貯めることが目的ではない

楽しもう

 

壊し作る


工事現場にいた
キリンのようなクレーン車が
忙しいそうに動いている

そこで働く男たち
真剣な眼差しで
重いものを運んでいる

ここには学校があった
いつのまにかなくなり
今度はマンションができるらしい

できて十数年
まだピカピカの校舎
壊す姿も僕は見ていた

恐竜のような重機で
頑丈なコンクリートを砕いていた
思い出も一緒に

そこで働く男たち
一所懸命
ほこりで真っ白になっていた

壊す人と作る人
壊すものと作るもの
みな一生懸命

壊しては作る
その繰り返し
いったい誰が決めているのだろう

子供の砂場
作っては壊し
壊しては作る

それと同じ
そんな僕らは
成長しているのだろうか

新しいマンションができた
若い家族が引越し中だ
希望に溢れた顔

いつかこのマンションも壊す日が来る
早いか遅いか
それだけのこと

ずっと昔から行われてきたこと
壊しては作る
ものだけではない

思い出も一緒
だから僕らは成長する
そう信じてる

 

その場所


昨日海に行ったんだ
海水浴じゃない

防波堤の上から
しばらく海に沈む夕陽を見ていた

空には不思議な雲
魚の骨のように広がる飛行機雲

どこまでもどこまで青い
透明な空

遠くの山々には
雪が積もっているのが見える

幸せだな
そんな言葉が不意に出てきた

僕が幸せであるならば
ここにいる人たちみんな幸せだ

幸せになりたい人
みんなここに来ればいいのに

そうすれば戦争だって
競争だってなくなるはず

だから僕は
疲れてしまったとき
悲しいことがあったとき
人に裏切られたとき
人を裏切ってしまったとき
辛いとき
どうしたらいいのかわからないとき

ここにくるんだ
そして幸せになるんだ

いや違う
幸せであることに気づくんだ

みんなもそうしたらいいのに
教えてあげる
 

素晴らしい一日


綺麗な夕陽
あたり一面が輝き出し
真っ白い雲がピンク色に染まり
空と溶け合い
幻想的な風景に包まれる

そう思ったばかりなのに
いつの間にか漆黒の闇がやってきて
夕陽は地平線の彼方に消え
輝きの端だけ残して
行ってしまう

もう眠る時間だ
疲れただろ
ゆっくりと体を休めて
家族と一緒に
今日一日に感謝しなさい

そんな優しさ
たくましさを
僕らに伝え
カーテンを下ろすかのように
夕陽は去って行く

次の日の朝
僕は朝日に出会う
夕陽とは違う美しさ
あたり一面が金色に染まり
それは希望の輝き

そのとき気がつく
この朝日は夕陽ではないかと
再会の瞬間
同じ太陽なのにまったく違う存在となって
僕らの前に現れる

夜の間
彼は何をしていたのだろう
地球の反対側
多くの人たちに
希望を与え続けていた

癒し
希望
一日の始まりと終わりに
僕らを慰め勇気付ける
そんな彼

久しぶりだね
ご苦労さん
そんな声をかけてあげたくなったけど
太陽は僕にこう言った
いつも一緒だよ

僕は君の味方
いつもみてる
だから
少しだけ
僕に気づいてくれればいい

きっと素晴らしい一日
やってくるから
僕と君と
一緒に過ごす一日が
幸せに輝き出す

だから
気づくだけでいい
僕らは一つ
素晴らしい一日
僕らが作り出す輝き