平和


ミサイルが飛んできたらしい
サイレンは鳴らなかったが
スマホがけたたましく鳴っていた
空襲警報
そんなことでもないらしい
窓を開けて
空をしばらく見ていたけど
何もなかったのでテレビをつけたら
みんながミサイルミサイルと言っていた

次の日
テレビをつけたら
不倫だ不倫だと
老人やおばさんたちが吠えていた
あんな真面目そうな人が
あんな優秀な人が
あんな地位のある人が
僕らを裏切ったと騒いでいたけど
僕らは何かを期待していたのだろうか

また次の日
テレビをつけたら
公園に狐が現れた
危険です
寄生虫を持っているかもしれません
行政は何をしているのだろうか
近くに住む人にインタビューして
不安ですというコメントを伝え
笑っていた

ミサイルと不倫と狐
うちのテレビはどうかしてしまったのだろうか
と思い近くの電気屋さんでテレビを見たけど
何十台もあるテレビは同じ内容を放送していた
テレビの中の老人やおばさんたちは
怒ったり笑ったりしてたけど
みなどこか暗い顔をしていて
何かに気づいてるけど
気づかないふりをしているようだった

戦争だ戦争だ
と皆が騒ぐけど
皆どことなく笑っているのは
なぜだろうか
多分
自分だけは大丈夫
そう思っているのだろう
そう思って生きてきたから
そうとしか思えないのだろう

僕らは気づくことから始めなければいけない
このテレビという機械がなんなのか
嘘のつきかたを教える道具なのか
嘘を気づかなくさせるものなのか
受信するということは
発信する者がいるということ
そんな暇つぶしに
付き合うほど僕らは暇ではないはずだ
僕らは気づかなければならない

早くしないと手遅れになっちゃう
自分で考えることを放棄しちゃダメだ
わかってるだろ
どうでもいいことと
どうでもよくないことを
面白おかしく
伝えようとしている人たちがいるってことを
どうでもよくないことが
大事だから嘘ついているんだから