コーラ


暑い夏の日
駅のホームに僕らはいた

学校の帰り道
たわいのない話をしている

赤い缶コーラ
君は美味しそうに飲んでいる

欲しそうに見えたのか
彼女がこっちを見た

何も言わず
コーラ缶を差し出した

飲んでもいいよ
目でそう言っていたけど

飲めるわけないじゃないか
君が口をつけたコーラ缶

君は強引に僕の手に持たせて
素知らぬふり

口から心臓が飛び出しそうだったけど
そんなふりは微塵も見せず

何事もなかったかのように
僕は彼女のコーラ缶に口をつけた

そして何事もなかったかのように
僕は彼女にコーラ缶を返した

何事もなかったかのように
そ知らぬふりをして

僕の
精一杯の一世一代の芝居

僕の喉には
強烈な何かが飲み込まれていた

彼女は何事もなかったかのように
僕のことをチラッと見てから

残ったコーラを飲み干した
そして僕を見て笑った

これがはじまり