誰もいない街


車に乗っていたら
どこまでも行けるような気がしてきて

どこまでも行ってみた

きらめく海
霧に包まれた森の中
どこまでも青い空が広がる大草原
コンクリートで囲まれた大都会
白くきれいな湾にかかる橋
波止場の突堤
田んぼの畦道
誰もいない街

突然止まった
燃料が切れたらしい

給油しようと
ガソリンスタンドを探したけど

その街には誰もいなかった

どこまでも行ける
そう思ったけど

どこまでも行けないことがわかって
家に帰ろうと思ったけど

家にも帰れないことがわかって
誰かに助けを求めようとしたけど

誰もいなくて

僕は一人であることに気がついて

すっとそうだったことに気がついて

だからどこに行く必要もないことがわかって

誰もいない街に

安心した