僕は

 

僕は僕であって僕ではない

そんなこと思っていたけど

僕は僕でしかないから僕でしかなくて

気づいていたけど気づかないふりして

僕は僕になることを願っていた

 

そんな僕は毎日を一生懸命に生きていたのだけれど

僕はいつまでたっても僕になれないものだから

不満を言ったり不平を言ったり

でもそんなことを我慢したりして

空を見ながら生きてきた

 

ある時

僕は僕になろうと決意して

旅に出ることにした

行くあてなんかない

どこでもよかったけどどこでも良くはなかった

 

緑の草むらに囲まれた丘を抜けると

空が広がっていた

その空の下には

果てしない果てしない

本当に果てしない海が広がっていた

 

それを見た瞬間僕は

これは海ではなくて

宇宙

そう宇宙だと気がついたから

吸い込まれるようにして必死に飛び込んだ

 

その時

僕は僕になったことに気付いた

僕は宇宙になったことに気付いた

僕は宇宙だったことに気付いた

だからいつも空を見ていたことに気付いた

 

なんだかとても幸せで

嬉しくて

誰かが手を差し伸べてくれていて

その手をつかむように

僕は僕になった