幸せな暮らし

 

人が楽しそうな顔を見ると

なんだか自分も楽しくなる

 

人が喜んでる姿を見ると

なんだか自分も嬉しくなる

 

プレゼント

 

誕生日や記念日

だから僕らは贈り物をする

 

楽しんでほしいから

喜んでほしいから

 

そして

 

自分も楽しみたいから

喜びたいから

 

結局は自分のためなんだ

ということは

 

悲しくて

寂しくて

辛いと思うことがあったなら

 

誰かに助けを求めるのではなく

誰かを喜ばせればいい

 

そうすればきっと

自分は楽しくて嬉しくなるから

 

でも決して

見返りを求めてはいけないよ

 

そんな自分になれるといいな

そんな皆になってくれるといいな

 

それを幸せというのだろうね

 

その店は盛り場の外れにある

カウンターだけの小さなスナック

思い思いに歌うことができる

よくある店

 

ただひとつ違うのは

店主の女性

皆がじっと聞き耳を立てるその声は

歌姫

 

陳腐な表現だけど

そんなふうに

感じる

その歌声は奇跡だった

 

店主が言った

あなたも歌いなさいよ

僕はへたくそだから聞くだけでいいです

ムッとしたように店主は言った

 

なんのためにここに来たの

私と一緒に歌うのよ

とんでもない

店主は勝手に歌を選んでいた

 

DREAMS COME TRUE

こんな難しい歌

僕に歌えるはずがない

店主はお構いなしに歌いはじめた

 

なぜか僕の大好きな曲だった

好き

素敵な曲

僕は店主の歌う姿をじっと見つめていた

 

なぜだか僕は不意に目の前にあったマイクを持った

自分でも分けがわからなかった

僕は店主と一緒に歌っていた

好き 好き 好き

 

店主の歌声にリードされて

こんなに難しい歌なのに

僕は歌と歌詞とひとつになって

そして店主とひとつになって歌っていた

 

歌い終わると

店主はへへんと言う顔で僕を見ていた

わかったでしょ

これが歌よ

 

そういうと

店主は違う客のところに行ってしまった

僕は店を出た

高揚した顔に夜風が気持ちよかった

 

歌は聞くもの

外出する時はいつもヘッドホン

電車の中でもみんなそう

歌が好きだから

 

でも違った

当たり前だけど歌は歌うものだった

何百年も前からそう

テレビで見るどこかの原住民だってそう

 

歌は特別の人のものではない

歌は歌い引き継がれていくもの

だから歌詞がある

僕は歌をはじめて知った

 

そんな夏の夜だった

 

 

 

 

わからないことだらけ

 

朝顔

最近見てないな

 

夏休み

どこに行っても咲いていた

 

枯れて種ができると

それをつまんで遊んでいた

 

夕顔

そんな花もあった

 

ちょっと小ぶり

どちらも青とピンクに染まってた

 

いつも水に滴って

瑞々しく咲いていた

 

なんで最近見ないのだろう

ツルを伸ばす場所がないのだろうか

 

それとも

みんなが飽きてしまったのだろうか

 

そしたらテレビが伝えていた

朝顔市が開催されています

 

そうかそうだったのか

 

見えなくなっていたのは僕なんだ

飽きてしまっていたのは僕なんだ

 

目に見えるものしか気づかない

目に見えたものにも気づかない

 

そんな自分になっていた

 

目を閉じて耳を澄ます

そして感じてみる

 

気づかないものたくさんある

忘れてることもたくさんある

 

だから僕らは学ぶ

一生学び続ける

 

だって知りたいもの

いろんなこと知りたいもの

 

そういう生き物だから

それがこの世界だから

 

すごいな

良く出来てるな

 

なんか少しわかっちゃった

わからないことだらけ

 

 

 

 

 

 

デパ地下にて

 

デパ地下にいた

この世の天国

あっていいのか

こんな場所

 

美味しそうな食べ物

見たことのない食べ物

たくさん

それにすごい人

 

みんな列をなして

美味しいもの求め

たくさん買って

帰っていく

 

限定品です

特別です

いまだけです

そんな言葉に惹かれていく

 

美味しい

たしかに美味しい

けど

なにか引っかかる

 

それが何かわからない

誰か教えてくれないか

ここは天国?

それとも地獄?

七夕

 

七夕ってなんの日だっけ

願い事をする日

こんな自分になれますように

いいことがありますように

願いを込めて僕らは短冊に書く

 

晴れるといいな

なんで?

天の川見えないから

なんで見える必要があるの?

七夕だから

 

七夕は

織姫と彦星が1年に一度

出会える日

天の川を挟んで

最も近づく日

 

だから

僕たちは二人に幸せを祈って

願って

僕らの幸せも

願う

 

そう

七夕は

一年に一度だけ

出会える二人の幸せを願う日

嬉しくて悲しい日

 

だって

出会ったら

別れなければならないから

また一年

相手の幸せを祈って別れる日

 

僕らはそんな二人の切なさを思いながら

二人の幸せを願い

僕らの幸せを願い

あの人に会えることを願い

お盆を迎える

 

出会うことができたから

別れなければならない

別れがあるから

出会いがある

七夕はそれを教えてくれる日

 

 

僕は知っている

 

朝の匂い

君は何を感じる

 

なにか清々しい匂い

突然やってくる

 

朝だけではない

夜にも訪れる

 

時々

何でもないとき

 

いつか嗅いだことのある匂い

感じて思い出す

 

あの夏の日のこと

なんでもなかった日常

 

ラジオ体操

夏休みのプール

友達との会話

そして

あたたかい家庭

 

なんとも思わなかった

なんでもなかたった日常

 

この匂いを感じるとき

僕のまわり

 

たぶんタイムマシーン

あの時に入れ替わっている

 

誰かがそうしているのか

何処かからやってくるのか

 

わからない

わからないけど

 

僕は知っている

思い出せ

 

気づけ

誰かが言っている

 

僕がそれを必要としている

誰かが言っている

 

その匂いを嗅ぐとき

僕はあたりを見回す

 

そして

ありがとうと言ってみる

 

ありがとう

笑いながら言ってみる

深呼吸

 

朝起きて

思いっきり深呼吸する

 

草木の

香りがする

 

真新しい空気

出来たての空気

 

この世で一番のご馳走

たっぷり吸い込む

 

そして

一日の元気をもらう

 

ありがとう

まわりの緑にお礼を言って

 

駅に向かう

清々しい一日の始まり

 

その日の夜

僕は疲れていた

 

いろんな事があって

僕は疲れていた

 

駅からの帰り道

いつもの帰り道

 

僕は気がついた

そして深呼吸をした

 

僕のからだの帳が

何処かへ飛んでいった

 

清清しい

だけでなく

 

力強い

その空気

 

僕は気がついた

浄化している

 

この一日

汚れちまったこの世界

 

一生懸命浄化している

逞しい草木たち

 

その力強い生まれたての空気は

僕の汚れをも消し去った

 

朝の新鮮な空気は

僕らが汚していないだけ

 

夕闇の中で生まれたこの空気は

僕らの汚れを浄化している

 

一生懸命浄化している

気づいた僕は

 

大きく深呼吸して

朝と同じように

 

ありがとう

緑たちにお礼を言って帰路についた