強い風

 

とても

強い風が吹いている

 

まるで嵐のよう

飛ばされそうだ

 

けれどその風は

なにか心地良い

 

向かい風と

追い風

 

僕はどちらを選ぶのか

僕はどちらに進むのか

 

いままで

僕は何も考えていなかった

 

追い風に乗ることしか

考えていなかった

 

追い風に乗って

何処に向かうというのだろう

 

そこにゴールはないかもしれないのに

どんどん離れてしまっているかもしれないのに

 

楽だから

それだけの理由で

 

僕は

追い風のことしか考えていなかった

 

僕らは

時に向かい風に向かわなければならない

 

この嵐のような

とても強い風

 

その時

僕らは気づく

 

この向かい風の清々しさ

そして

 

この強さに抗う

僕の強さ

 

時には

向かっていこう

 

この嵐のような

とても強い風に

 

この向かい風は

僕らに向かって吹いている

泣き虫

 

僕は泣き虫だった

ちょっとしたことで

泣いていた

 

僕は泣き虫だった

たいして痛くもないのに

泣いていた

 

僕は泣き虫だった

なんでもないことなのに

泣いていた

 

僕は泣き虫だった

悲しいことが悲しくて

泣いていた

 

いつからだろう

僕は泣くことを

忘れていた

 

いつからだろう

僕は泣き虫では

なくなっていた

 

悲しいことがなくなったのか

痛いことがなくなったのか

決してそんなことはない

 

僕は忘れていた

僕は鈍感になってしまった

僕はただの大人になっていた

 

この間

誰もいないところで

思いっきり泣いてみた

 

でも

泣けなかった

僕はそんな僕になっていた

 

泣きたい自分を

誤魔化し欺き

泣けない自分になっていた

 

僕は泣き虫だった

ただただ泣きたいから

泣いていた

 

僕は泣き虫だった

ただただ自分に正直に

泣いていた

ビール

 

夕方

キンキンに冷えたビールを飲み干し

ああ旨い

そう言ってみる

 

まだ明るい空に

ビールを透かして

キレイだな

その琥珀色から生まれてくる泡の粒を見つめる

 

ビールは嘘をつかない

ビールは僕の味方

ビールは僕の友達

雄一の友だち

 

そんなことを思いながら

ビールを飲み干し

この瞬間

いつまでも続けばいいのに

 

そんなことを思いながら

新しいビールを冷蔵庫に取りに行き

缶を開ける

プシュッいい音だ

 

そんなことを思いながら

新しいビールをグラスに注ぎ込み

再び

空にかざしてみる

 

美しい

空も

ビールも

この瞬間も

 

そう思って

僕は楽しくて

嬉しくて

笑ってた

 

遠くに

雲が見える

 

圧倒的な

存在感

 

津波のように

湧き上がり

 

いつ

僕らを飲み込むのか

 

そんな

 

彼らは

この世を覆い尽くし

 

彼らは

支配する

 

しかし

彼らは知っている

 

彼らは

彼らの存在は

 

か細く

物悲しい

 

彼らは

ものすごい塊のようで

 

なにもない

何もない存在

 

水と空気の間

そんな生き物

 

何もない

何もない存在

 

一緒だ

僕と一緒だ

 

物質か

物質でないか

 

であるならば

僕にもできるのだろうか

 

あの圧倒的な存在感

見るものを畏怖させ

 

そして安心させる

懐の深いあの存在

 

雲のような存在に

僕もなれるのだろうか

 

僕を見て

微笑む人がいる

 

いつかそんな

雲みたいな存在になりたい

 

僕の

願い

 

魔法の言葉

 

湯船に浸かり

天井を見上げると

 

みなれない景色

そんな事に気づいて

 

ポタリと

湯気が滴り落ちてきて

 

ババンババンバンバン

声に出してみたら

 

笑っちゃった

幸せすぎて

 

ババンババンバンバン

みんなも言ってみよう

 

魔法の言葉

バカみたいに

 

幸せな言葉

そんな事も知らなくて

 

そんなことにも気が付かなくて

僕はバカだな

 

そう思って

湯船に沈んでみた

 

 

僕らはひとりじゃない

 

テレビで

メジャーリーグの中継を見ていたら

 

スイート・キャロライン

大合唱している

 

なんでだろう

それよりも

 

みんな楽しそう

みんな幸せそう

 

きっとそんなことはない

誰しも一緒

 

辛いこと

悲しいこと

 

持っている

心の引き出しにしまってる

 

でも

だから歌う

 

ひとりじゃない

みんなで歌う

 

僕らはひとりじゃない

僕らはひとつ

 

贔屓のチームの応援歌

でも本当は

 

自分に対する応援歌

 

だから

歌ってみよう

 

僕らも歌ってみよう

 

大きな声で

みんなと一緒に

 

スイート・キャロライン

僕らはひとりじゃない

 

僕ら

 

昨日

素敵な雲を見た

 

君も見たかい

気づいたかい

 

夕暮れの青空に

ぽっかり浮かぶ雲

 

綿あめを引きちぎったかのように

いくつもの雲が浮かび

 

その姿は

からだの中から輝きに満ちて

 

夕焼けに

赤く赤く染まっていた

 

そんな雲は

やがて夜の帳に覆われて

 

姿を消してしまう

夕闇に溶け込んでしまう

 

あの圧倒的な存在感

一体どこに行ってしまったのだろう

 

何処にも行ってやしない

そこにいいる

 

見えている

気づかないだけ

 

美しさ

美しいもの

 

見えなければわからない

同じものなのに

 

夕焼けのように

誰かに引き立てられないとわからない

 

美しさ

もっと感じよう

 

美しさ

僕らもそうなろう

 

僕らだって

もっと美しくなれるはず

 

いや

僕らは美しい

 

だから

気づきあおう

 

僕らは

美しい