綿帽子

 

散歩をしていた

まだ暑い日が続くものだから

汗をかきながら

疲れたなと思いながら

ただただ歩いていた

 

いつものように

耳を澄まし

目的を持たないことで

見えるものが見えるから

ただただ歩いていた

 

ふと気づく

前から何かが飛んできて

僕は避けようとしたけど

よくみたらそれは

綿帽子

 

ふわふわと

ただただ風にふかれるままに

やってきて

僕の前で

大きく浮き上がってきた

 

まるで

僕に気づかせるように

僕に気づいてほしいかのように

その綿帽子は

僕の前に現れた

 

僕は手を伸ばして

綿帽子を掴んだら

一緒に風に乗って

空に舞い上がってしまった

グーンと浮き上がっていった

 

まるで傘を持つかのように

綿帽子を掴んだ僕は

昔見たチャップリンの映画のように

綿帽子と一緒に

空を散歩していた

 

空から見る地上は

今まで見たことのない姿で

そこには

僕の家や

家族があって

 

なぜだか急に皆が愛おしくなって

綿帽子から手を離したら

さっきの散歩道で

空を見ている僕がいた

その目の先には綿帽子

 

綿帽子はグーンと浮き上がったり

落ちてきたりしたけど

もう僕の前にはやってこなかった

今度は誰のところに行くのだろう

綿帽子