久しぶりに映画を見たんだ
年の離れた恋人たち
ベッドで本を朗読する
年上の彼女は
真剣な眼差しで
泣いたり笑ったり
本を読んでもらったことなんて
いつのことだろう
本を読んであげたのも
よく考えたら
本も読んでない
いや何もしていない
僕は本屋さんに行き
一冊の本を買ってきた
そして一人部屋で
声に出して読んでみた
ひとりで
ささやくような声で
僕は誰に向かって読んでいるのか
僕は誰かのために読みたかった
誰かのための僕になりたかった
本を読んでる僕は僕ではなくて
誰かのための僕であって
その本もその誰かのものになっていた
僕もいつか
本を書いてみたい
その本は誰のための本だろう
誰かに読まれる本でありたい
誰かのための本でありたい
誰かのための僕でありたい