美しき日々


美しい日々
もう帰ってこない

いつもそんなことを思い
悔やみ絶望する

でも
そんなこと当たり前

そんなことに
なぜ気づかない

美しい日々
自分で作り出せばいい

かつての美しい日々は
与えられたもの

これからは
自分が与えるもの

それを美しい日々と考えるかどうかは
自分しだい

もしかしたら
喜びの日々
感動の日々
困難の日々
驚愕の日々
悔恨の日々
かもしれない

でも
どのような日々にできるか
どのような日々にするか
何を与えられるか
何を与えるか

すべて自分しだい
僕がどうするか
それだけだ
 

 

灯台


あの灯台にやってきた
夢で見た
あの灯台

灯台
真っ暗な闇夜にあって
僕らの唯一の道しるべ

船舶だけのものじゃない
道に迷っている
僕らすべてのもの

灯台は強烈な光で
僕らを誘う
大丈夫だから安心して

だから僕は決めた
僕は灯台になる
そう決めた

あの日
夢の中で僕は灯台だった
こっちへ来いよ

みんなを誘う光を発して
自信満々に
輝いていた

だけど
あの子だけは
道に迷ってしまった

僕は灯台だけど
あの子を探しにいくことにした
そして見つけた

あの子だった
僕は灯台なのに
あの子は気づいてくれなかった

僕を知らなかったから
だから僕は灯台をやめて
あの子のための僕になろうとした

夢で見たあの灯台
僕であり僕ではなかった
絶望と希望の象徴

灯台
夢で見たあの灯台
もう光を発してはいなかった

 

トマト


ベランダにトマトを植えていた
小さなトマト
プチトマトってやつ

トマトは立派な蔓にぶら下がり
いくつも連なって
すくすくと成長していた

僕は蔓を引っ張って
僕もぶら下がりたいな
そんなことを思ったら

蔓に登って
雲の上にいる
大男に出会う物語を思い出した

あれはなんの蔓だろう
そんなことはどうでもよかったけど
僕も登りたいと思った

でもそんなことできるわけもなくて
蔓にぶら下がった
トマトを一つ食べて見た

甘いけど
酸っぱくて
なんだか生きてる匂いがして

僕は少し謝りたくなったけど
なんだか元気が湧いてきて
ああそういうことか

生きるってそういうことか
そう思って
蔓を触って見たら

僕の腕だった
僕が食べたトマト
それは僕の心だった

 

声が聞こえる


街ゆく人々
ヘッドホン
みな音楽を聴いている

好きな音楽
いつも聴いていたい
いつでも聴ける

でも僕は好きじゃない
だって聞こえなくなる
街の声

雑踏の中でコンクリやネオンの声
電車の中で軋む線路や車輪の声
誰もいない家の中で静寂という空気の声
山の中で木々や葉っぱや虫の声
誰かが笑い怒り泣いてる心の声

僕は気づきたい
みんなの声に気づきたい
僕の声にも気づいて欲しい

ヘッドホン
たまには外して出かけよう
素晴らしい音楽
自然の音楽
人々が奏でる心の声
気づくことができるから

素晴らしさ
きっと気づく

 

美しさ


その石の壁には
緑の苔が生えていた
いったいいつから
この場所にいるのだろう
何のために
誰にために
誰から見られるために
この場に居続けたのだろう

僕は
生きている
この場に
居続けている
誰のために
何のために
誰かに見られるために
この場に居続けて居たのか

僕は
居続ける
僕の意思で
それが
自然だから
あの石の壁の苔のように
誰かのためではなく
自分自身のために僕はここに居続ける

そして
その姿が美しければ
人に勇気を与えるものであれば
それは
素晴らしいこと
そんな僕になりたい
けど
それが目的ではない

僕は僕だから
岩の壁の苔のように
誰かのためではなく
僕自身のため
僕のために美しい僕
そして
その姿が皆にも美しいと思ってもらえる僕
そんな僕になりたい

 

素顔のままで


海と一緒に暮らす人たちがいる
山と一緒に暮らす人たちがいる
僕らは何と一緒に暮らしているのだろう

海や山と一体となり暮らす人々
自然と一体となることで
生活が自然の一部となる暮らし

その人たちは皆幸せそうだ
素敵な顔をしている
生きている顔をしている

僕らは幸せだろうか
僕らはいつだって素顔を隠している
化粧や服や時には心で

僕らは装っている
見られたくないから
本当は何もないことを知っているから

実は彼らも同じだ
自分に何もないことを知っている
だから自然と一体となる

都会に住む僕らだって
できるはずだ
自然と一体となること

それは見かけの問題ではなく
心の問題だから
みんなが教えてくれている

仮面を脱ぎ
心を解放して
自然になること

それが素敵なことだから
それが必要なことだから
みんなが教えてくれている

 

水族館


水族館で魚を見ていたら
色々な魚たちが
僕の方を睨みながら
悠然と
しかし戸惑っているかのように
水槽の中をさまよっていた

彼らは僕をどのように見ているのだろうか
分厚い水槽越しに
歪んだ僕の顔はどのように見えているのだろうか
不思議そうに覗き込む
得体の知れない僕は
彼らにとって何者なのだろうか

魚たちは
口をパクパクさせながら
降ってくる餌を
上手に食べていた
何もしないで
気楽なもんだ

そう思ったけど
よく考えたら
僕も同じ
何不自由なく
何もしていないのに
食事を与えられている

僕は僕の意思で仕事をし
報酬を得て
自分の意思で食べたいものを食べている
そう思っているとしたら
それは間違い
僕は何もしていない

僕は魚を捕まえてもいないし
牛や豚を育ててもいない
狩りをしているわけでもない
米や作物も育てていない
何もしていない
大切なことなのに

僕らはスーパーで売っている
形の整えられた食べ物を
何も考えないで
何もしてないで
偉そうに
食べているだけ

僕らも水槽の中にいるのかも知れない
口をパクパクさせて
何も考えないで
決められた道を行ったり来たり
餌を与えられて
生かされてる

魚は僕を見て
何も思わなかっただろう
同じ
ただ生きているだけ
生かされているだけ
それを知っているから

どうする
僕はどうする
何も動物を捕まえたり
米や野菜を育てろということではない
意思を持って
自分の意思で全てを捕まえること

それだけ
ただそれだけだから
僕らは自分の意思で自分を生かさなければならない
それが生きるということ
それが自然になることだから
さあ水槽を出よう